壱

  • へし切長谷部
  • 岩融
  • 鶴丸国永
  • 薬研藤四郎
  • 歌仙兼定

弐

  • 小狐丸
  • 小狐丸
  • 燭台切光忠
  • 岩融
  • 膝丸
  • 小狐丸
  • 小狐丸
  • 小狐丸
  • 小狐丸
  • 大倶利伽羅
  • 岩融
  • 小狐丸
  • 小狐丸
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  • 小狐丸
  • 小狐丸
  • 小狐丸
  • 小狐丸
  • 小狐丸
  • 小狐丸

参

  • 小狐丸
  • 小狐丸
  • 南海太郎朝尊
  • 南海太郎朝尊

小狐丸
2020年5月10日

掌にとろりとしたクリームを絞り出す。この季節は少し水仕事をするだけで指先が赤くなってしまうから冬は困りものだ。白く柔らかなそれを粗方塗り込んだところで「小狐丸ちゃん」と彼の名を呼ぶ。手を貸して、と声をかけると、大きな太刀は待っていましたとでも言うようにニコニコと手を差し出してきた。その手を握り、大きな手にもクリームを塗り込む。寒いし乾燥するし、本当に冬は困りものだ。が、この愛おしい刀剣男士が嬉しそうに擦り寄ってくる姿を見ると、もう少しだけ冬が続いても良いかもしれないと少しだけ考えてしまうのだ。ハンドクリームの柔らかな香りが室内に広がった。‬

小狐丸
2020年5月10日

「また明日」を幾度も繰り返した。変わったものは多くあったが、それでも、顕現したあの日から今日まで、いつになろうとも変わらず彼女との「また」がある。なんと幸せで、なんと心地よいのだろう。‬
己が重症で起き上がれない日も、彼女が疲れ果てて先に眠ってしまった日も、耳元でどちらかが「また、」と囁く。そうして朝が来て、彼女の瞳の宝石が己を映す。一日が始まる。‬‬
そのように積み重ねて、終わらぬ「また」を夢に見る。繰り返し語られた物語より生まれた刀の、密やかな願い事だ。‬
「小狐丸ちゃん、また明日」‬
「ええ、ぬしさま、また明日。おやすみなさい」‬‬
朝が来る、日が沈む、そしてまた朝が来る。‬

南海太郎朝尊
2020年5月10日

「先生」と彼のことを呼ぶ。他の刀のことをそのように呼んだことはない。「からかっているのかね?」と彼は目を細める。わたしは曖昧に笑う。だって一目惚れしたその人のことを、まともに声に出して呼べる気がしないのだ。その名を口にしようとすると、喉の奥が熱くなって、心臓が早鐘を打つ。足下がふわふわとして、崩れ落ちそうになる。刀剣男士を束ねる将が情けない、と笑われるかもしれない。だからせめてもの抵抗だ。だから私は「先生」と彼を呼ぶ。いつか、彼の名を呼ぶことはできるだろうか。‬‬

南海太郎朝尊
2020年5月10日

彼を呼ぶたびに初期刀は不機嫌そうな顔をする。当然だろう、新しく本丸に来た刀だ。そのようなモノを『先生』という敬称をつけて呼ぶなど、良い気分ではないだろう。‬‬
それでも私は、初期刀の「なんでアイツだけ?」という問いに、上手く答えられない。‬‬
「あ、そ、れは」‬
「それは、何?」‬
彼と同郷の刀が彼をそう呼ぶからとか、彼が学者だからとか、幾らでも理由はあったはずなのに。‬
悟られては駄目だ、表に出してはならない、いつも通り、今まで通り。たったそれだけのことなのに、どうしてこんなにも難しいのだろう。