Somebody To Love

Euphoria

文化祭以降、彼は変わった気がする。どこが、と明確に言葉にすることはできないけど、少しだけ。

 譜面台の隙間から彼の横顔を覗き見ると、何やら難しそうな顔をしながらギターの弦を弾いている。機嫌が悪いわけではなさそうだけれど、少し話しかけづらい。長いまつ毛が影を落とすその人の瞳は、新緑を宝石にしたみたいな色をしていて、その表情に似合わずきらきらと綺麗だ。
文化祭の後で部員も増えたし、彼自身も部活より受験勉強を優先しなければならなくなってきたから、仕方がないことなのかもしれない。環境が変われば、関係性が変わってしまうのは当たり前のこと。今もこうして部室に来てくれているのも奇跡みたいなものだ。彼が卒業したらきっと、こうして定期的に会うことすらできなくなってしまう。
「……それは、やだなぁ」
子供のようなワガママを自分にしか聞こえような大きさの声で口にするとずっと正面を向いていた彼が不意にこちらを向いた。
ちゃん、何がやなの?」
「えっ、あっ……、聞こえてたんですか?」
「あはは、ちょっとだけ。で、どうしたの?」
「あ、いや、なんでもないです、大丈夫」
「そう?」
心配そうにこちらの顔を覗き込んでくる彼に「ほんとに大丈夫です」と頷いてから、壁にかかるカレンダーをぼんやりと見る。次の部活の日はアルは久しぶりにレッスンだし、ロペスは用事があるから来れないと言っていたから参加者が少ない。活動は休みにしようかと一瞬考えていた。が、元々たった一人だとしても活動をしていた部活だ。人数が少ないからと休みにする必要は無いと思い直す。……それに、もし部室に彼が来てくれるなら、久しぶりに二人で話ができるかもしれない、だなんて、淡い期待を抱いてしまう。臆病なくせに欲張りな私は、『二人きりになりたい』と直接彼に言うことはできないのに、彼と二人きりになれるチャンスを手放すことができないのだ。