ポツリと小さく「会いたいなあ」という呟きが電波に乗って届いた。「え?」と聞き返すと「なんでもない! ごめんね!」と彼女は手をひらひらと振って困ったように笑う。そんなところで誤魔化したりなんかしなくても良いのに、……オレも人のこと言えないけれど。
とはほぼ毎日メッセージをやり取りしているし、週二回以上通話もしてる。特に無理はしていないし、させていないつもりだ。お互いの心地よいペースで連絡が取り合えているからこそ、こうやって結構長い期間『恋人同士』の関係が続いているんだろうなと思う。
だけど、会える回数となるとオレが寮生活をしていることもあって己の欲望に比べて圧倒的に少ない。足りない。なんだか前に監督生ちゃんが言っていた『織姫』と『彦星』の伝説みたいだと思う。滅多に会えない二人は一年に一度だけ川を渡って会うことができる。オレはまあ、一度と言わず年に数回は彼女と会えているし声も聞けているけど、とはいえ滅多に会えない相手に焦がれ続けているのは伝説の彼等と同じだ。まあそうやって会いたいって気持ちを口に出したことはあんまりないけど。だって彼女は違ったら、会いたいと思っているのはオレだけだったら、なんだかやるせないし、情けないし、格好悪い。
だから、こうやって、無意識に口から言葉が出てきました、みたいな感じで、彼女からのラブコールが聞けて、ちょっとだけ浮かれている。……いや、本当はちょっとどころじゃなく、かなり。「ねぇ、ちゃん、さっきなんて言ったの?」だなんてウキウキで意地悪く問いかけてみるくらい。
多分彼女は、『こういうことを言ったらケイトくんに迷惑かもしれない』とか『面倒くさい女と思われちゃうかもしれない』とか考えちゃってるんだろうな。そんなこと全然ないのに。オレは君に欲張られると嬉しいんだよ。
「よく聞こえなかったからさ〜、もう一回言って?」
「なんでもないって言ったのに〜……、」
「なんでもなくはないでしょ、ほら」
「……今日のケイトくんは意地悪ですね、」
「はは、知ってる。でも意地悪なのも好きでしょ」
嗚呼、早くその小さな耳朶に触って、真っ赤になっていることをからかってやりたい。
すき、と掠れるような声が返ってきて、思わず口元がにやけてしまった。