スターゲイザーの衣装を着たトレイと並んで撮った写真をぼんやりと眺めながら、オレはごろりと寝返りを打った。投稿にはすでにいいねがいくつもついていて少しだけほっとする。いいねが一つもついていない投稿を残しておくのは、少し怖い。
更新をするたびに増えていく数字を眺めながら、先程のトレイとのやり取りを思い返す。去年のスターゲイザーに伝えた願い事は忘れていた。今年の願い事もたぶん忘れるだろう。そんなにすぐに忘れてしまうようなことって、本当の願い事なのかな。きちんと考えたことがないからよくわからない。だって、去年のものも今年のものも、オレの願いであることは確かだし。
他にオレに願い事なんてあったっけ、一年後……いやせめて一ヶ月くらいは忘れず覚えていられるようなやつ。そしてトレイに言えるやつ。頭の中で願いが浮かんでは消えていく。どれもあんまり願い星に込めるには相応しくなさそうな願いだ。まあそんなもんだよね。オレは割と空気が読めちゃうから、こういうとき相応しい・相応しくないとかを考えてしまいがちだ。苦笑して深々ため息をつく。が、ため息だなんて『オレらしくない』からパチンと頬を軽く叩いてもう一度寝返りを打つ。
「……星に願わなくても今叶えられる願い、叶えてもらお」
そう呟いて通話履歴を立ち上げる。気分を切り替えるため、5コールで出なかったら諦める、と小さく言い訳しながら、何度も繰り返し並ぶ名前の一つをタップすると、呼び出し音が数秒鳴り、ガタガタと言う音の後、慌てたような声がスピーカーから聞こえてくる。
「も、もしもし!」
「……やっほー、ちゃん、今話できる?」
「大丈夫! できます!」
ビデオ通話で繋いだけれど、画面には泊まりに行った時に何度か見た彼女の部屋の天井が映ってるから、今日は映像NGなのかもしれない。「ちゃん今何してたの?」と問いかけると、「化粧水塗ってました、あ、ビデオちょっと待ってくださいね、」と返ってくる。完全に顔を見せるのを拒否されていたわけではない、それだけでなんだか、心臓がギュッと掴まれたような心地になってしまう。
とはいえ、彼女のスキンケアが終わるのを黙って待っているのも手持ち無沙汰だから、彼女を邪魔しない程度に呼びかける。
「ねぇちゃん、」
「なんですか?」
「ちゃんの願い事って何?」
それは興味本位の問いかけだった。用事が終わって画面に現れたとやっと目線がかち合う。カラーメイクをしていないせいかいつも以上に幼く見える彼女は少し笑って、考え事をするように小さく首を傾げた。
「願い事……? ……うーん、たくさんあるけど、一個は今もう叶っちゃいました」
「えっ、嘘! なになに!?」
「ケイトくんとお話したいなって、思ってたんです」
そう思ってたら電話がかかってきたからびっくりしちゃった、と彼女は嬉しそうに笑う。それでなんだか難しく考えていたことがすう、と溶けていって、思わずオレも笑ってしまった。
「オレも願い事たくさんあるけど一個はもう叶っちゃった」
「えっ、なんですか?」
「ふふ、ちゃんとおんなじ」