大食堂に向かいながらデュースはチラリと隣を歩くオレンジ色の頭を盗み見る。彼、ケイト・ダイヤモンドには前から付き合っている恋人が居たはずだ。そのような相手がいるのに、ゴーストにプロポーズなんかして良いのだろうか。誠実という言葉とは程遠いこの先輩だが、彼女に会ったことがあるのだというトレイの口振りから察するに、多少は相手のことを大事に思っているはずだ。たぶん。おそらく。だから、野暮かもしれないが、「そういえば、ダイヤモンド先輩、本当にいいんですか?」と聞いてしまった。「何が?」とこちらを振り返ったケイトは不思議そうに首を傾げる。
「『何が?』って……、先輩、彼女居るんですよね?」
「あー! そういうこと? ってか、デュースちゃんがそういう話してくるなんて意外〜」
「いや、『意外〜』じゃなくて」
なんと言えば良いものか、と頭を抱えていると、『チャラい』先輩は「あはは、分かってるって!」とデュースの背中をポンと叩く。
「ちゃん……あ、俺の彼女ね。ちゃんの学校さ、共学なんだよね」
「共学……、」
「そ、だから正直同じ教室に男子が居るのめちゃくちゃ嫌だ。ちょっと嫉妬してる」
目の前の彼は楽しそうに喋っているが目は笑っていない。きっと、『ちょっと』どころではなく『すごく』『めちゃくちゃ』嫉妬しているのだろう。そして多分、この男のことだから、彼女の前ではあまりそのことは口に出さないようにしているんだろう。「……先輩って案外わがままっすね」と呟くとケイトは「ふふふ、」と笑い声を上げた。
「そーだよ、オレわがままなの。末っ子だし。で、オレばっかり嫉妬してるのはなんか釈だから、今回はちゃんの方にヤキモチ妬いてもらお〜と思って」
だからゴーストにプロポーズすることにした、と言って食わせ者の先輩はニヤリと笑う。……なんというか、本当に、この人は……。
「……僕、彼女さんに同情します、」
「え!? なんで!? 別に何も悪いことしてないよオレ!」
そういうところだよ、と言ってしまおうかと思ったが、さすがに言葉を飲みこんだ。なにせ、恋人同士のやりとりだなんて、全くさっぱり経験のないデュースには口を出す権利は一切ないのだから。