背中に彼の体温を感じる。の部屋はそこまで広いわけではないから、エアコンの風ですぐにひんやりと冷たくなる。普段であれば寒く感じることもあるほどだが、今日はむしろ暑いくらいで、じんわりと汗をかいてしまっている。それでも、後ろからを抱きしめているケイトは全く離れる素振りを見せないから、匂わないだろうかと少し焦る。スン、と鼻を鳴らされてびくりと肩が跳ねた。小声で「ケイトくん?」と声をかけると、彼はそのままの体制で「ちゃんさ、」と喋り始めた。息が首にかかって少しくすぐったい。
「ちゃんさ、香水、つけてる?」
「……え、あ、うん、この前のやつ……」
「あっ、あれか。やっぱつけてるとちょっと匂い変わるね」
ふふふ、と嬉しそうに笑ったケイトは人差し指での首筋を何度か撫でた。少し前に彼が贈ってくれたパフュームはなんだか大人っぽい香りで、つけるだけで少し緊張した。恐る恐る「……臭くないですか?」と聞くと「ぜーんぜん、いい匂いだよ」とまた首筋の匂いを嗅いでくるから少しだけほっとする。……と、同時に、身体の他の箇所にも意識がうつり腰の辺りの感覚が最初とは違うことにようやく気づく。固く、熱く、形を変えたそれは、きっと、おそらく……。
「……あ、あの、あのね、ケイトくん、下……」
目を泳がせながら遠回しに小声で告げると、「当ててるんだよ」とケイトはやけに楽しそうにに笑うから、どのような顔をすれば良いかわからなくなる。
「こうやってくっついてたらさ、そーいうことしたくなっちゃう。ちゃんは違う?」
耳元でそう言ってくる彼は本当にずるい。本当はも同じ気持ちなのだけれど、それを口にするのはとてもとても恥ずかしいから、ゆるゆると小さく頷くことしかできない。それでも彼はの意図を汲み取ってくれて、「やった、」と喜んでくれる。それだけで胸がいっぱいになって、満たされたような気分になるから、なんと単純なのだろう恋する心というものは。
するり、と彼の手がの手と重なる。触れられたのが手の甲でよかった。掌に触れられたら、緊張して手汗でペタペタと湿っていることがすぐにバレてしまう。……いや、緊張していることは彼にはお見通しなのだろうけれど。その証拠に「耳、赤くなってる」と楽しそうに耳たぶを掴まれた。
「……緊張してる?」
「……少し、」
「ちゃんの部屋なのに?」
「私の部屋、だから、です」
「はは、そっかあ、」
首筋に彼の髪が触れる。ふわふわとくすぐったくて、いい匂いがして、そしてなんだか、
「ね、キスしていい?」
恥ずかしくなるばかりだからそんなの聞かなくていいのに、と言うのは野暮なんだろうか。何も答えずにゆっくり彼の方を振り返ると、頬を撫でられ、少しだけ上を向くよう視線で促されて、唇を奪われる。彼とのキスは好きだ。触れるだけの優しいものも、どろどろに溶けていくような深いものも。何度も何度も繰り返すうちに、数度のバードキスの後彼が「口、開けて」と囁いてくるタイミングもわかるようになってきた。だからそれより前に、ちょっとだけ隙間を開けてしまう。目を開けたままだったから、彼が少しだけ驚いたような表情をするのがよくわかった。すぐにぬるりと舌をねじ込まれ、口内を犯される。くちゅ、くちゅ、という水音とエアコンの風の音だけが部屋に響いている。涙が出るほど恥ずかしくて、苦しくて、気持ち良い。小さな息継ぎの後、もう一度襲われる。ずっと頬を撫でていた彼の手はいつのまにかするすると下に下りていて、ぷちぷちとブラウスのボタンを外し始めている。中途半端に乱された隙間から、彼の手が入り込んでいる。指の腹で下着越しに胸の中心を撫でられて、びくりと腰が揺れる。酸素が足りなくなり始めた脳がこれから彼に抱かれるのだという事実を改めて認識し始めて、を女にしていく。口の端から「ふ、ン、」と小さく甘い声が漏れた。