Jewelry Box宝石箱のひみつ
since.2020.05.27

耳朶に花

 ケイトがに唐突にプレゼントを渡すのはこれが初めてではない。嬉しそうに目尻を下げてお礼を言われるのも、己が渡したアクセサリーや洋服で徐々に彩られていく彼女を見るのも気分が良いから、贈り物をするのは好きだ。それに、差し出された箱を開いて驚いたようにぱちぱちと瞬きをする彼女はとても可愛い。

「これ、ピアス?」

「そ、貰ってくれる?」

 控えめに装飾されたそれはきっと彼女に似合う。「オレとお揃いだよ」と髪をかきあげて耳を見せてやると、手の中のピアスとケイトの耳についたそれを見比べて「あ、ありがとうございます、」とペコリと頭を下げたあと、彼女はいつもしないような少し申し訳なさそうな顔をする。

「けど、でも、えと、私、穴あいてなくて……」

 予想通りの反応だったから、少しにやけてしまう。申し訳なさそうに俯く彼女の耳に手を伸ばして親指でなぞってやると、びくりと細い肩が震えた。

「知ってる知ってる、今からオレがあけてあげるからだいじょーぶ、」

「えっ、ケイトくんが?」

「そう、」

「……今ここで?」

「ダメかな?」

 首を傾げて彼女の目を見る。こうすると優しい彼女はなかなかお願い事を断れなくなることをケイトは知っている。「ちゃんと『安全ピアッサー』ってやつ用意したんだよ」とプラスチックでできたそれを見せびらかすと、は「じゃあ、お願いします」とゆるゆる頷いた。

 じゃあ早速、と耳朶を軽く掴んで、麻酔がわりに氷の魔法を軽くかけてやる。その反対の手で空いている彼女の手をそっと掴むと、いつも以上にぎゅっと強く握り返された。

「……もしかして、ちゃん、怖い?」

「……う、ちょっとだけ……ケイトくんは、穴あける時痛かったですか?」

「うーん、オレはそんなに。まあ、人によりけりだよ。めちゃくちゃ痛がったり、平気な顔してたり、色々」

「色々……、」

「魔法でしっかり冷やしてるから、心配しないで」

 そう言って頭を撫でると、彼女は小さく頷いてぎゅっと目を閉じる。頬をほんのり赤く染めて眉を下げたその表情が、情事の前のそれにどことなく似ていて、ケイトを違う意味で煽り立てる。

 あとでキスしてやろう、あけた穴が気にならなくなるくらいすごいやつを。そう思いながら、ピアッサーを彼女の耳朶に沿わせる。今なら己の指一つで彼女の身体の一部を如何様にもすることができる、そう思うとなんだかものすごくゾクゾクした。