普段はそのような素振りは見せないようにしているつもりだが、ケイトも己の欲に忠実な十代後半の青年だ。好きな女の子がそばに居て、他に誰も居ない部屋に二人きりで、楽しそうに笑っていて、時折上目遣いでこちらを見てきていたら、そのような気分になってくる。ごくりと生唾を飲んだ音は彼女の耳に届いていませんように、と密かに願いながら、『そういうことをする雰囲気』になんとか持ち込もうと画策する。指を絡めてみたりして、熱のこもった視線で見つめてみたりして、普段は呼ばない呼び捨てで名前を呼んでみたりして、そうしているうちに絆されてくれた彼女がそっとシャツの裾を握ってくれたくらいのタイミングでその細い身体を抱き上げる。妖精が纏う衣のような色をしたワンピースは、柔らかい素材であったせいか、彼女を抱き上げると同時に重力に従ってさらさらと揺れた。
「ケイトくん、」
小さな呼びかけに、ケイトは何も応えない。その不安気な色を滲ませた声に何かを返す代わりに、耳の少し上の辺りに唇を落としてやる。優しくする気はある。すごくある。けど、止めてやる気は一切ない。我ながら意地の悪い男だと思う。でも腕の中にいる彼女が今頼ることができるのはケイトだけだから、縋るように抱きつく腕に力を込めてくる。初めて出会った頃より幾分か大きくなった胸がふにふにと柔らかく形を変えながらケイトの手や腕にひっついてくる。……悪い気はしない。むしろいい気分だ。
「ちゃんはこれからどうして欲しい?」
彼女がどう答えようと、することは決めているくせに、遠回しな聴き方をしてしまうのもたぶん『そう』だ。顔を赤くした彼女をベッドにそっと下ろして、頬をできるだけ優しく撫でて、柔らかな彼女の唇に己のそれを合わせる。なんだか甘い味がする気がする。甘いものは苦手なのに、彼女とのキスは何度も繰り返したくなるほど好きだから不思議だ。だんだんキスが深く長くなっていって、歯止めが効かなくなってくる。ずっとそうしていると、彼女がぺしぺしとケイトの胸のあたりを軽く叩いて少し苦しそうに、そして何か言いたそうにこちらを見てくるから、一瞬だけ唇を離してやる。
「……あ、のね、ケイトくん、」
「ん〜?」
「私は、ケイトくんがしたいことして欲しい、です」
一瞬なんのことか分からなかったが、さっきの問いに対する答えなのだと気付く。思わずまじまじと彼女の目が少し潤んでいたのは、先ほどの長いキスで息を止めていたせいか、はたまた、ものすごく大胆で恥ずかしいことを言ったことを自覚したせいか。その彼女の言葉にも、甘えるような声音にも、そっと逸らされる視線にも、なんだかものすごくグッときてしまって、「……はは、ずるいなぁ」と呟き彼女の肩に額をトンと乗せた。
「じゃあオレ、もっとずるくて意地悪なこと言っちゃうかもしれないけど、いいの?」