「ケイトくん、いつ開けたんですか、これ」
そう言いつつ隣にいるがケイトの耳朶に手を伸ばしてくる。予想外のことに思わず肩が跳ねてしまう。
「えっ、何?! ピアス?」
「うん、……あ、ごめんなさい、くすぐったかったですか?」
嫌がっているように見えたのだろうか、慌てて手を引っ込めて眉を下げた彼女はどこか子犬のように見える。
「いや、だいじょーぶ、ちょっとびっくりしただけ」
「わああ、ほんとにごめんなさい、」
「いいっていいって、触りたいんでしょ? いいよ、」
そう言って「ほら」と髪を耳にかけると、きらきらのアクセサリーに興味津々な彼女は「いいの?」と嬉しそうに目を瞬かせた。再び恐る恐る手を伸ばしてくるから、そんな必要ないのになんだか少し緊張してしまう。
「かっこいいですね、ピアス」
「そう?」
耳のそばに顔を寄せて間近でじっと見てくるものだから小さく呼吸音が聞こえてくる。本人はピアスに触れているつもりなのかもしれないが、時折肌に直接爪先が触れるから少し妙な気分になる。細い指が耳の縁をするするとなぞる。ぞわぞわと背筋が粟立ち、無意識のうちに深いため息が漏れた。そうしているうちにふと意地悪な考えが頭を過ぎる。いつもはしないようなことをしてきている彼女に、いつもは言わないようなことを言ってみたら、どんな顔をするだろう。
「……ちゃん、あのさ、」
「えっ、はい!」
細い手首を掴む。痕がつかない程度に強く握って、彼女の前では普段絶対見せないような悪い笑みを浮かべてその淡い色の瞳を覗き込む。
「こーんな触り方しちゃって、もしかして誘ってる?」
「……あ、えっと、それは、」
しどろもどろになり、目線を逸らす彼女がなんだか可哀想で、可哀想だけど可愛くて、悪い笑みを保つことができなくなってしまう。思わず吹き出してクククと笑うと、目の前の少女は何が起こったのかわからないという風にパチパチとさせている。
「うそうそ、ちょっとくすぐったかったからからかってみただけ、びっくりした?」
髪の毛を梳くように撫でてやるとポンと花が咲くように彼女の顔が赤くなる。握ったままの手を引いて抱き寄せると小さな身体はケイトの腕の中にすっぽりと収まる。そうして子供をあやすように背中をトントンと叩いてやるとは何かを言いたそうに眉を下げてこちらを見上げてきた。
「……えっ、と、あの、ケイトくん、」
「ん? 何?」
彼女は少し背伸びして、再びケイトの耳元に顔を寄せて、聞こえるか聞こえないか分からないくらいの大きさの声でささやいてくる。
「……本当に、誘いたくて触ってたんだって言ったら、どうします?」