握られたシャツの裾に気づき、ケイトは苦笑する。目の前の彼女は何を怖がっているのか『そういう雰囲気』になるとケイトの手を握りたがらない。
「ちゃん、掴むならこっち」
そっと指を解いて己のそれに結び直すと、小声で「あっ、ダメ」と慌てるが、ぎゅっと握ってやる。離してやる気はさらさら無い。
「なんでダメなの? オレ、別にちゃんの指を切り落としたりはしないよ?」
冗談のつもりで物騒なことを言うとサッと青ざめるから、この子は可愛い。「うそうそ、冗談!」と頭を撫でてやるとホッとしたように擦り寄ってくる彼女が好きだ。そのまま耳元に唇を寄せてできる限り優しい声で問いかけてやる。
「オレと手繋ぐの嫌?」
「ち、ちがうの、そうじゃなくて、……前、ケイトくんの手に爪の跡が残ってたから……」
俯きながら喋る彼女の声は次第に小さくなっていって最後は囁き声のようになってしまっていたが微かな音て紡がれた「気持ち良くなったら爪立てちゃうからダメなんです、」は確かに耳に届いた。脳内で何度かその言葉を反芻する。徐々に頬が緩んできているのが鏡を見ずともわかる。
「そっかぁ、気持ち良かったんだ、」
ニヤニヤと顔を覗き見ようとすると目の前の女の子は頭から湯気が出そうなほど真っ赤になって一切こちらを向いてくれなくなる。
「ケイトくんの意地悪……」
「あはは、ごめんごめん、……でも、意地悪なのも好きでしょ?」
「……すき」
どんなに意地の悪いことを言っても、どんなに好き勝手しても、彼女は絶対に自分のことを『嫌い』とは言わないから浮かれてしまうし調子に乗ってしまう。フワフワした気分のまま、すぐにでもこの細い身体を押し倒してめちゃくちゃにしてしまいたい気持ちを必死で堪えながら、ケイトは「続きしていい?」と再び彼女の耳元で囁く。恥ずかしがり屋の少女は肩をびくりと震わせたが何も言わない。だけど、ほんの少しだけ、ケイトだけがわかるように、コクリと小さく頷いた。