Jewelry Box宝石箱のひみつ
since.2020.05.27

好きの可視化

 彼に誘われて何度かナイトレイブンカレッジの行事を見に来たことがあるだが、何度訪れてもこの広い敷地と人の多さに慣れることはない。彼に「この辺りに居て」と指定された付近の座席に座ってはいるものの、ここに居て大丈夫なのか、場違いではないだろうか、と、不安で仕方がない。キョロキョロ辺りを見回していると「お姉さん、今一人? 隣に座っても良い?」と声をかけられる。慌てて振り返ると見覚えのある人物がそこに立ってひらひらとに向かって手を振っていた。

「け、ケイトくん、びっくりした、」

「ごめんごめん! 久しぶり、ちゃん」

 顔の前で手を合わせてウインクするの好きな人は、久しぶりに直接顔を見るとなんだか今まで以上に格好良くなっている気がして、小さく感嘆のため息をついてしまう。マジカメの写真なんか比べ物にならないくらい素敵だ。まじまじ眺めていると「何見てるの?」と笑うその顔も好きだ。

「あ、えっと、ケイトくん準備は大丈夫なんですか? ハーツラビュルの次の試合は……、」

「今の試合の次の次。その前にちゃんに会えないかな〜と思ってここまで来てみた」

 早めに行かないとうちの寮長怖いからここに居られるのはちょっとだけなんだけどね、とケイトは苦笑するが、少しだけだろうがなんだろうが、ここに来てくれることが嬉しいから、なんだか浮かれてしまう。

ちゃん、ちょっとこっち向いて」

 名前を呼ばれて浮かれた気分のまま彼の方を向くと、手首をそっと握られて、柔らかい何かが一瞬唇に触れて、離れた。至近距離の彼の顔がゆっくり離れていって、すらりとした指がそっとの髪の毛を梳る。

「じゃ、オレ頑張ってくるから、しっかり見ててね」

 そう言ってひらりと手を振り立ち去る彼を呆けた表情で見送ることしかできない。数十秒後、時間差でハッとして、一気に顔に熱が集まってきた。こんなに真っ赤になった顔、隠していたいのに、そんなことしていたら彼の試合を見ることはできない。どうすれば良いんだろう、と困り果てたを助けてくれる人はここにはいないから、冷たい飲み物のボトルを頬に当ててやり過ごすことしかできなかった。