「カップルアカウント?」
首を傾げるオンボロ寮の監督生とグリムを交互に見てエースは「そう!」と頷く。
「今ちょっと流行ってるらしい、彼女と写真撮ってマジカメにアップするやつ」
「……でもうちは男子校だからやってる奴なんかいないだろ」
訝しむデュースに「甘いなデュース、キャンディみたいに甘い」とエースはニヤリと笑う。
「見つけちゃったんだよ、うちの学校の、しかもうちの寮の、カップルアカウントやってる奴」
じゃーん、と口で効果音を出してエースが示したのは淡い色のハートがたくさん舞っているマジカメの写真だった。そこに映るのは小柄な少女と、もう一人、監督生達もよく知っている……、
「……ダイヤモンド先輩じゃないか」
「おう! これで彼女をネタにケイト先輩の弱みが握れるかも……」
ガッツポーズするエースを見てデュースとグリムが首を傾げる。
「でもこれ本当にダイヤモンド先輩の彼女なのか?」
「確かに、ケイトのことだからフォロワーを増やすためにただの知り合いと写真を撮っただけの可能性もあるんだぞ」
スマホの画面に夢中になっていたせいで、近づいてくる足音に気がつかなかった。後ろから聞き覚えのある声に「一年生たち、」と声をかけられて思わず全員の肩が跳ねる。
「やっほ! オレがなんだって?」
「うわ、ケイト先輩」
「どもっす」
「なんの話、なんの話? オレにも教えてよ」
エースとデュースとじゃれ合うケイトのスマホの画面の明かりがついたままになっている。見るつもりはなかったが、視界に入ってきたそのロック画面に監督生は思わず目を瞬かせた。
「あの……、先輩の待ち受け……」
声に出そうとした瞬間、ケイトと目が合い、ウインクされて、監督生は慌てて口を噤む。そこに映っていたのは確かに先程のマジカメの写真でケイトの隣に写っていた女の子の寝顔だった。
食堂に仲間たちの声が響く「本当に彼女なんだ、」という監督生の呟きは昼休みの喧騒に紛れて消えた。