時間遡行軍から逃げる少女がいることに最初から気がついていた。敵を全て殲滅した後もすぐ側の茂みに隠れて居ることに気がついていた。今にも泣き出しそうになりながら村を焼く話を聞いていたことに気がついていた。
あの時、かつて任務でこの村に訪れた時に、己が刃を突き立て切り捨てた少女が、すぐそばに居る彼女であることにも気がついていた。
三日月宗近は刀である。美術品として飾られていた時期も勿論あったが、元々は人を斬り殺すために生まれた、人を斬り殺すために強くなった、そんな刀だ。だからだろうか、人の心はわかろうとしてもわからない。勿論、人に『苦しい』『恋しい』『愛おしい』という感情があることは知っている。けれど、それがどのようなものかわからないのだ。三日月宗近は刀である。
そういうと「でも、三日月さんは私の考えていること、思っていること、全部わかっているみたい。だから本当は、わかってるんじゃないですか?人の心のこと」と主は言う。が、それは違うのだ。知っているのと理解できているのとでは全く違う。戦の経験がない者は、戦の写真や映像や資料を見てその結果や惨状を知ることはできても、実際のその痛みや悲しみ怒り憎しみを知ることはできない。それと同じことなのだ。千年を超えて生きていると多くのことを知ることになる。同時に、『知っている』と『理解している』を綯い交ぜにして言葉にすることが上手くなる。
そうつまり、三日月宗近は人の心がどのようなものか知っている。が、理解しているとはとても言えないし、人の心が己に備わっているともとても思えなかった。現に今、時間遡行軍に追われていた彼女を再びこの手で殺すことに全く躊躇はない。例え彼女との関わりが増えて、彼女の人となりを知り、彼女に命乞いをされたとしても、揺らぐことはないし、任務が変わることはない。三日月宗近は彼女を殺す運命なのだ。
とはいえ、かつてこの村を訪れた時の地獄のような光景を忘れてしまったわけではない。村人たちは赤子も男も女も皆泣き叫び、声を枯らした。その表情は醜く歪んで、恐怖と憎しみが溢れ出していた。そこに居る悪夢のような刀の付喪神達を、平和な村を脅かす侵入者たちを、殺してやる、そんな顔をしていた。……そうして彼らは死んでいった。三日月宗近がその手で殺したからだ。勿論石切丸や部隊の他の刀たちも大勢殺したが、人数だけでいえば三日月宗近が一番多く殺した。そんな自負があった。が、全く誇らしくはなかった。
村人は、誰一人救えなかった。が、大勢を救った。……そのはずだった。
今、再び三日月宗近は、誰一人救わず大勢を救う道を選ぶことになる。あの時背負った憎しみを再び背負うことになる。
いや、ひょっとしたら、此度この村を燃やしても再度、村を滅ぼさねばならぬ日が来るかもしれない。人の心の入っていない空っぽの身体で、憎しみを背負い続けたら、刀の付喪神はどうなってしまうのだろう。
皆が寝静まる頃、は村にあるありったけの桶を自宅に運んでいた。どれだけ大きな炎だとしても、水を用意しておけば少しは消し止めることがはず。これで大丈夫、とはとても言えないが、何もないよりはマシだろう、とでも考えているのだろうか。
最後の桶に井戸水をくみ上げる少女の前に、月の名を持つ太刀は近づいて行く。
「良い夜だなぁ、」
三日月宗近は微笑んだ。まるで二人の間には憎しみも苦しさもわだかまりも、一つもないのだとでも言うように。
「三日月様、」
彼女の絞り出した声は震えていた。彼の身にまとう雰囲気が、どこか普段とは違う感情を産んでいるのだろうか、村娘は不安げな表情を見せる。
「どうした、何が言いたいことがあるなら、口にしてみれば良い」
そんなに対して、三日月宗近は、相変わらず穏やかだった。この男が村を焼こうと考えているなど、信じられないのが普通であろう。だが、は彼がやろうとしていることを知っている。恐ろしい男だ。……でも、だからこそ、
「三日月様、お願いがあります」
「ほう、何かな?」
「村を、焼かないでほしい」
「……それは、」
「それができないのならば、私を、村の外へ連れて行って欲しい」
「……見返りは?」
「私は小作の農民です。大したお礼は用意できません。……でも……それでも、三日月様、貴方にこの身を捧げます」
「本当にそのようなことを言って良いのか?本当に俺がそのどちらかを選ぶとは限らんぞ。ただただ慰み物としておぬしを扱い放り出すだけかもしれないし、若い女を売り買いする者に引き渡すかもしれん」
「それでも良いの、何もしないよりずっとマシ。三日月様……好きにして」
「ははは、そうかそうか、……そう怯えずとも良い。近う寄れ」
そう言っての腕を引いたその手は、ほんのりと暖かくて優しかった。
父母の亡き後、血の繋がりのない男を家に招き入れるのはにとって初めてのことらしい。どこか浮世離れした男の風貌は土間に大量の桶を並べた茅葺き屋根のあばら家には全く不釣り合いで、村娘は申し訳なさそうに俯く。が、対する三日月宗近はそのようなことはあまり気にしてはいない。むしろのような小作が暮らす建物が珍しくきょろきょろと楽しそうにあたりを眺め回している。
「あ、すみません、三日月様、いま灯りをつけますので……」
「灯りは、無くても良いのではないか?」
星明かりのみの闇の中、男が指し示すのは一対の寝具。何のためらいもない彼の様子に、の方が少し怯んでしまう。この身を捧げると言ったのは彼女の方なのに、おかしな話だ。そうこうしているうちに男は藁布団の上に腰を下ろして村娘を手招きする。
「さあ、こっちだ。……ふむ、少し固いが、俺が下になれば良いか」
「あの、三日月様……、」
「そう怖がらずとも良い、近う寄れ」
女の身体は操られてしまったかのように男の方へ導かれてしまう。真冬の夜風は氷のように冷たいが、心臓は燃えるように熱い。おずおずと彼の膝に腰を下ろすと、彼の鼓動も早まっていることが否が応でも分かってしまう。程よく筋肉がついた胸板に、耳を近づける。布越しでも、彼の生きている音が聞こえる。
「大事ないか、」
「ぁ、はい、大丈夫、です」
「そうか、なら良かった。さて、次は……、おお、そうだ。着物を脱がしても良いか?寒いかと思うが辛抱してくれ」
そう言うと三日月宗近はそっと彼女の着物の合わせに手をかける。閨事の経験が全くないわけではないが、このように優しく丁寧に扱われた事などないから、少し戸惑ってしまう。
一糸まとわぬ姿で、彼と向き合う。彼の方もするりと着物を脱いで、鍛えられた身体が露わになった。陶器のように滑らかな彼の肌に反して、彼女の肌はとでも『美しい』と言えるようなものではない。農作業によってできた痣や切り傷があちこちにあるし、日焼けの跡はなかなか消えない。それがなんだかとても恥ずかしくなって、視線を逸らして唇を噛む。が、目の前の美しい武人が「こちらを向け」とでも言うように頬に手を添えるから、否が応でもその瞳を捉えてしまう。
「いい子だ」
そう言って三日月は彼女の肩を、腕を、摩る。
三日月の腕はその柔らかな雰囲気の割に大きく、しっかりとした筋肉がついていた。刀剣男士であるから当たり前なのだが。反面、指先は繊細に、女の肌を愛おしそうに優しく撫でてくる。お互いにこの日初めて会ったばかりの筈なのに、幾度も肌を重ねたかのような、そんな懐かしくも温かい気持ちになっていた。
慣れない相手と睦み合う緊張に身体を固くしていても、女の身体は素直なもので、柔らかな弧を描く胸の先端・乳首の部分はすでにほんのりと硬さを持ち始めていた。はしたない、恥ずかしい、と手でその尖りを隠そうとするが、それより先に彼が目を細め、彼女の手を絡め取るから、抵抗することができなくなる。
「おお、既に感じてくれておるのか。嬉しいなあ、もっとよく見せておくれ、」
「ぃ、はず、かしいから……、」
「ふむ、美味そうだ」
「ぇ、ゃ、三日月、さま、……ッ、そんなところ、だめ、だめぇ、んぅ、ううう……ッ」
「だめ、ではないだろう?こんなにも紅くツンと尖らせて、気持ちが良いのではないか?」
「ち、がっ……っ、ゃ、あ、そんな……ぁ、ぺろぺろ……あっ、あ、ぁ、ぁああああッ」
ぢゅうっ、ぢゅるるるるるッ、ぷちゅっ、ぬちゅっ
舐め上げられて吸い上げられた乳首はますます主張していやらしい桜桃色に染まってしまっている。女は己の痴態から目を逸らしたくなっているようだが、乳飲子のように胸元に顔を埋める男から、金縛りにでもあったかのように目を逸らすことができない。
「おぬしの胸は甘い味がする、」
「しな、い、しないからぁ、」
「ふふ、可愛い、可愛いなあよ。胸に触れているだけなのに全身をびくびく震わせて……俺のこの魔羅を突き込めばどうなってしまうのやら……」
ぴとり、と硬直した雄を押し当てる。ぬるぬるとした煮えたぎるような熱に脳みそまで溶けてしまいそうだ。
「ぁ、……はぅ、……あつ、ぃ、……」
「そうだ、おぬしの痴態でこんなにも熱く固くなって……まるで鋼のようだとは思わんか?」
「ん、ふ、ぁ……」
「ふむ、随分と蕩けてしまっているな、一度胸だけで気をやっておくか、」
そう言うと男は吸い付いている方とは反対側の乳房を揉みしだき、その先端を爪先で弾く。
もにゅ、モニュモニュもにゅ、カリカリ、カリ、ちゅう、ちゅう、じゅるるるるるるッ!
「ぁ、あ、あ、ぁあああああッ、〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ」
「上手に気をやれたなあ、ほれ、俺の膝もぐっしょりと湿っておる、」
「ぁ、う、ごめん、なさい……」
「なに、謝らずとも良い。おぬしが感じているのが俺も嬉しい、」
「ぁ、三日月、さまぁ、ッ」
「ふむ、どこもかしこも性感帯になってしまったようだなあ、背中に少し触れただけなのにびくんと震えて……実に可愛らしいなあ、」
「い、わない、でぇ……ぅ、ぁ」
「ふむ、おぬしはどこが一番気持ちよくなるのか、俺に教えてはくれんか?」
「そん、な、わかんな、ぃ」
「ここか?」
「ぁ、んッ」
「それとも、ここか?」
「んっ、く、ぁッ」
「ふむ、これはどうだ?」
「ひゃっ、あっ、ぁ、あああああああああああッ」
「ふむ、ここだな、」
「三日月、さま、もう、……もうッ、」
「おお、そろそろ頃合いか。待たせてすまなかったなあ、」
「ぁ、あ、みかづき、さまの……おっきい……、こすこすって……ぇッ」
十分な長さのある彼の滾りは、経験のそう多くない娘でもそうであるとわかるほどに美しく、どくどくと脈打っている。こんなに美しいものを己の膣に埋め込んでも良いのだろうか、と不安になっているようだが、快感に従順な女の身体はその雄の塊を擦りつけられると自然と腰が揺れて蜜が溢れた。
「ああ、おぬしのここは小さいなぁ。挿れる前に少し解してやらねば……」
「ひゃ、うっ、んっ、……ッんんんんんんんんんんッ」
「はは、指を埋め込むときゅうきゅうと締め付けてくるなあ。良い子だ」
「三日月、さ、ま……ッ、ぁ、あ、」
「奥がもどかしいか?もう少し解したらいっぱいにしてやろうなぁ」
「ゃ、あ、んっ、二箇所、どうじ、に、ぅ、ッ、んんんんッ、」
コリコリ、くちゅ、くちゅ、くに、くにくに、ぬちゅぅ、
陰核と膣内を同時に攻められておかしくなってしまいそうだ。
「入り口も内側もどろどろになってしまったなあ、……ふむ、良きかな、良きかな、」
「ぁ、あ、三日月、さ、ま……三日月さまッ、ぁっ」
「ああ、待たせてすまなかったなあ。ほれ、力を抜いておれ」
「ひ、ぁ、あああああああッ、〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
ずっ、ず、ぬち、くちゅ、ずちゅうううううっ!!
すらりとしてそれでいて固くて質量のある陰茎が奥の奥まで埋めこまれていく。
まるで誂えられたかのように隙間なくぎっちりと絡みついてきて、ねっとりと蠢く膣内は、確かな熱を刀剣男士に伝えてくる。火を放たずともここから燃え上がって焼け死んでしまいそうだ。
「ぁ、おく、ぅ、ん、すご、あつ、い……、あ、そん、な、」
「ッ、は、ぁ、これは、なかなか……、だな、」
「ひ、ぁ、ぎちぎちって、ぇ、すご、ぃい、」
「っく、はぁ、ふむ、本当に、すごい、な、」
「ひ、ゃ、おっきく、……、なっ、て……ッ」
「はは、俺のが大きくなったのではなく、おぬしの中がキツくなったのではないか?ほれ、今もまたぎゅうぎゅうと、締め付けてくるッ、可愛いなぁ、」
「ぁ、あ、あ、あ、……」
言葉にならない声を上げることしかできないほど蕩けて我を失った女は、自らを穿つ男に身を委ねる。びくん、びくん、と身体を震わす様子は、まるで電流を流されたかのようだ。
「すっかり柔らかくなっているはずなのに、動く度に締め上げられる……、感度が良いのだな、」
ごつ、ごつ、ぶちゅ、ぶちゅ、ちゅう、
深く穿つたびに娘のナカがきゅう、と締まる。その度に小さな身体がしがみついてくるのがたまらない。
「三日月、さま、っ、三日月さま、ッ、」
「どうした、ああ、こんなに目に涙を溜めて……、痛いところでもあったか?」
「ちが、いた、くはない、けど」
「そうか?無理はするでない、」
「いたくない、いたくないんです、き、きもちよすぎて……、こわ、い……、」
「ふふ、怖い、か……、」
「ぁ、ごめ、なさ……ぃ、」
「いや、構わんさ、それだけ気持ちよくなってくれていて、俺も嬉しいぞ、」
「ぁ、ぐりぐりって、っ、奥……ッ、」
「ふむ、ここが子宮、か?ぷりっとしていて、擦り付けると気持ちが良いなあ、」
「……ッあ、っ、あ、ぁ、き、もち、」
「可愛い、可愛いぞ、ほれ、もう少しぐりぐり、奥を刺激してやろうなあ、」
「あ、あっ、あ、ぁ、あ、あ、」
「ッ、はぁ、ん、ここが良い、か、ますます締め付けて、俺もそろそろ限界が近いようだ、な」
「ぁ、三日月、さま、三日月さまッ、あああああああ、〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!」
「くっ、ぁ!ッ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
びゅるっ!びゅるるるるるるるるるるるるるるるるる!ぼびゅうっ、
彼女が達すると同時に勢いよく吐き出された白濁が子宮を叩く。息も絶え絶えになった村娘は蕩けたような表情で三日月宗近にすり寄ってくる。
「三日月、さま……、」
そうして少女は目を閉じる。次に目を開くのは次の日の朝か、それとも……。
ぱち、ぱち、と何かが弾けるような音で少女は目を覚ます。外はほんのりと明るい程度だが、この時期にしては珍しく、囲炉裏をつけずともぽかぽかと暖かい。
昨晩は久しぶりの行為のあまりの気持ちよさに気を失ってしまい、そこから先のことはほとんど何も覚えていない。改めて思い直すと、随分と相手の彼に迷惑をかけてしまったような気もする。初めてだったわけではないのに、情けない、恥ずかしい、申し訳ない。幻のような時間であったが、下腹部のぬるつきと腰の重さが確かに彼と身体を重ねたのだと訴えかけてくる。
そういえば、気を失うまではすぐそばにいたはずの彼は姿が見えない。狭い家だ、同じ布団に居なくても室内に居れば姿を見ることができる。影も形もないということは、外へ出て散歩でもしているのだろうか、……いや、それとも……。
嫌な予感がした、このまま全て終わってしまうような、跡形もなく灰になってしまうような、そんな予感だ。
慌てて飛び起きて外へ駆け出した。草履を履く時間すらも惜しくて、裸足のままだ。どうか思い違いであってくれと願った。だってこれではあまりにも……。
村中を回って彼を探すつもりだった。朝日が昇る山を背景に、すらりと背の高い彼の姿に目を細め、声をかけた後は朝食の話でもしながら戻るつもりだった。
でも、そうはならなかった。山の端の朝日が放つものだと思って居たほんのりとした灯りは、囲炉裏をつけずとも身体を包んだ暖かさは、勢いよく広がって村娘を襲う。
そう、の生まれ育った村は、一面の炎に包まれていた。
あれだけ桶を用意していたにも関わらず、いざ炎を目の前にすると足がすくんでしまって何も出来ない。まだ炎に舐められていない地面の冷たさだけが唯一の救いだ。
ひんやりとした足元と相反するかのような眼前の熱に溶かされてしまいそうだ。彼と体を重ねた時の熱とは全く違う、飲み込まれると、たちまち灰になってしまうであろう地獄の業火だ。
朝日は登らない。このまま常闇の中で火の粉に包まれて枯れ果ててしまいそうだ。……そうなってたまるものか。村娘は勢いよく桶の水を頭から被る。この規模の火災となっては己一人が火消しをしたしても焼け石に水。生き延びるにはこの炎の海を脱出するしかない。……が、その前に火をつけた彼らに一太刀浴びせるくらいしてやりたい。煙で息苦しくなりながらも、少女は旅の彼らの姿をさがすために駆け出した。
が、燃えさかる村の何処を探しても彼らの姿はない。
すでにその身を焼かれたか、はたまた火をつけ逃げたのか、少女は知る由もなく、煙を吸い込み意識を手放した。