梅の酒に浸かる

「青梅をたくさんいただきました」

と、が嬉しそうに籠の中を見せてきたのは梅雨の前のことであった。主は街を出歩いたり他の審神者に会ったりする度に何か貰い物をしてくる。常日頃から誰にでも優しく丁寧に接する彼女であるから、皆に好かれているのだろう。小狐丸はそれが誇らしくもあったが、反面、そのような良い顔をするのは本丸の刀剣相手だけに…もっと欲を言えば自分だけにしてほしいとも思っていた。そんな我儘を言っても主が聞き入れてくれるはずもないので黙っているが。

「梅のシロップの作り方を教えてもらったので、作ってみますね。」
「しろっぷ?」
「ええと、蜂蜜のような、甘くてとろっとしたものです。」

そう言いながら主は籠を抱え厨に向かう。大量の梅を洗うつもりなのだろう。「ほう、」とつぶやきそのあとにつづいた。

水道というものは便利なものだとおもう。井戸まで水を汲みに行かなくても、蛇口を捻れば水があふれ出てくる。小狐丸の生まれた時代には無かったものだ。

少しだけ赤く色づいた青梅を細く白い手で洗う主をじっと眺める。普段であれば「そんなに見られると恥ずかしいです、」という彼女だが、今はそれよりも目の前にある果実に夢中になっているのだろう、小狐丸をとがめるようなことはしない。

たっぷりの水であく抜きした梅の水気を手ぬぐいでふきとる。彼女の青梅に触る手つきが重傷になり手入れされている時を思い起こさせた。そういう時も彼女は、傷ついた小狐丸の身体に優しく触れてくる。
このように何かに集中しているときの彼女は、綺麗で艶めかしいと思う。閨事をしているわけではないのに不思議だ。

大きな硝子の瓶に一つ一つ丁寧に蔕を取った梅と氷砂糖を入れる。小狐丸はが楽しそうに青梅を瓶に詰めていく様子をじっと見ていた。
彼があまりにまじまじと見るものだから、何を思ったのか主は氷砂糖をひとつ差し出して、小狐丸の口に入れてきた。

「おいしいですか?」

目を細める彼女の問いに、小狐丸は頷く。半透明な砂糖の塊は口の中でゆっくり溶けて甘く広がる。まるで彼女の唇のようだと小狐丸は目を細めた。

主が今度は他所の審神者から酒をひと瓶譲り受けてきた。深緑の瓶の中身は小ぶりな猪口に少し注いだだけでもくらりと脳が溶けてしまいそうなほど強い。それでもかなり高価なものらしく、皆で宴会の際に飲んでも良いのだがしばらく宴の機会もない為、此度は誉をとった小狐丸へ、と明け渡された。
酒好きの刀剣の手に渡しては瞬く間に無くなってしまうのであろうが、徳利に移して少しずつ煽るのが性に合う小狐丸の手元にあってはなかなか量が減らない。
それでも、一人静かに杯を傾けるのにとても適しているその酒が、小狐丸は気に入っていた。

「小狐丸ちゃん」

縁側で一人月を見ながら猪口を手にしていると主がひょっこりと顔を出してきた。彼女は小狐丸が一人で酌をしているときは、気を遣ってかあまり声をかけてこないから珍しい。

「お隣よろしいですか?」
「えぇ、どうぞどうぞ。ぬしさまがこちらに来てくださるとは、うれしや。」

主は小狐丸の隣に腰掛ける。その手には琥珀色の液体が入った硝子の杯が握られていた。

「梅が調度良い頃合いだったんです。水や、炭酸で薄めてもおいしいんですよ。小狐丸ちゃんもいかがですか?」
「いえ、私にはこれがありますゆえ。」

そう言って徳利を振ると主は「あまり飲みすぎないでくださいね、」と窘めるように言って笑う。

「ぬしさまこそ、そのように薄着をされてお風邪をひかれませんよう。昼間は暑いとはいえ、とくにここは夜冷えますゆえ、」
「あ、そうですね…ちょっと上着を取ってきますね。」

本来ならば近侍である自分が取りに向かうべきなのだろうと思うが、ここは黙って主がぱたぱたと戻るのを見届ける。そして狐はにやりと笑い、そこに置いてある硝子の器に、密かに己の徳利の中身を注ぎ込んだ。

彼女がその液体を口にするまで気づかれなければそれでいい。

氷がカラリと音を立てて液体の中を回った。

小狐丸の思惑通り、主は酒を入れてもほとんど色が変わらなかった梅の飲料をそのまま口をつけた。少し味の変化に気がついたのだろうか「小狐丸ちゃん、何か…入れたんですか?」と問われたが、狐は楽しそうに笑うだけで何も答えない。
そのまま不審そうな顔をしながらも硝子の器を傾ける主に、もう少し警戒して欲しいとも思うが、その方が好都合だという思いと、小狐丸であればと信頼されているのだろうという喜びも相まって夜闇の太刀は何も言わない。

そこまで酒に弱いわけではない、むしろ小狐丸より少し強いかもしれない彼女だが、本来少しずつ飲むべき酒を炭酸で薄めたとはいえ一度に体内に入れたのだから、普段通りというわけにはいかないのだろう。
いつもより血色がよくなった頬を撫でると、ゆっくりと小狐丸の手に擦り寄る彼女のとろりとした表情は情事のそれによく似ている。

「お酒…ですか?」
「ええ、御察しの通りです、ぬしさま。」

仕上げ、とばかりに小狐丸は自身の口に含んだ酒を、彼女に口付けて流し込む。こくり、と喉が上下させ熱い液体を飲み込んだ彼女の髪を梳くように撫でて「よくできました、」と耳元で囁いた。

「っふ、…あ、…あつい…、」
「ふふ、ではお召し物を脱いでしまいましょう。少しは涼しくなるでしょう。」

と、既に息を荒くした彼女の着物の合わせに手をかけ胸元をはだけさせ、内腿に手を伸ばそうとすると、不意にその手を掴まれ制される。

「……や、だ、…まって、小狐丸ちゃん、」
「おや、ぬしさま、小狐は野生ゆえ待てはできませぬと幾度も申し上げているではありませんか。」

そう、くすりと笑っていうが、彼女はぎゅっと掴んだ小狐丸の腕を離そうとはしない。ら

「……そ、…じゃなくて、今日は私から、」
「……おや、この小狐にはぬしさまの可愛らしい場所を触れさせてくださらないのですが?」
「…ん…あとで、…お願いします、」

そう言って彼女は小狐丸の袴を緩め、滾りに優しく触れてくる。
軽く口付けられ「ね?」と首を傾げてとろりと微笑まれると逆らう事ができなくなるのは、彼女が君主であるからこそか、はたまた惚れた弱みか、小狐丸自身にもわからないが、こうして彼女に従う事が不快ではないという事は確かだ。

じゅるじゅると音を立てて吸われ、思わずびくりと腰が跳ねる。竿の後ろの袋も擦るようにぐりぐりと触れられ、直ぐにでも達してしまいそうになるが、愛らしい主が自身を慰めている姿をまだ見ていたくて、ぐっと堪える。

じゅる、じゅ、ちゅっ、

「ふっ、ぐ、〜〜ぅ…ん…」

舌先で鈴口をくりくりと抉られ、気持ちよさに少し膝が震える。情けないとはおもうが、彼女の口淫が上手すぎるのだから仕方がないと思う、

「くっ…、はぁ…、随分と上手になられましたね、ぬしさま、どちらで覚えになられたのですか、」
「んっ、ふっ、小狐丸ちゃんの、で、覚えました」

意地悪を言ってやろうと思っていたのに上目遣いでそう返されては何も言うことができなくなる

「〜〜ぅ、ちゅ、ぁ、また、おっきくなった、」
「ん、はぁ、ぬしさま…の、お口が……ぐっ…、気持ちが良い…から、ですよ…」
「ふ、ぁ、んっ、うれし、ちゅ、もっと、気持ちよくなってね…?〜〜ぢゅっ、」

じゅぽっ、ぐじゅ、ぢゅぅ、

いやらしい水音が夜の闇に響く。あまり人が寄り付かない場所であるとはいえ、いつも事に及ぶ室内ではなく縁側だ。誰かが通りがかれば、見られてしまうということに変わりはない。それでも、その誰かに見られるかもしれないという背徳感が、小狐丸の滾りをさらに熱くしていた。

じゅう、と強く吸われ、なにかがせり上がるような心地になる。

「ぬしさま、ぬしさま、両手を出してくだされ」

小狐丸の言葉に首を傾げながらも、彼女は素直に手を差し出し、小狐丸に従いそのちいさな手を器の形にする。

「注ぎますよ、ぬしさま。」

びゅる、びゅるる、びゅぶっ、

が拒絶する前に、口や手で愛撫された陰茎は、小狐丸が二、三度擦るだけで簡単に欲を吐き出した。

ちいさな手で作られた器に注がれた液体は先程主の硝子器に注ぎ込んだ酒によく似た色をしている。

「飲んでくだされ」という狐の言葉に、主はとろりとした表情のまま、器に口をつけ、傾ける。液体を呑み込む為にごくり、ごくりと上下する喉を見ているだけで、興奮して、小狐丸の自身は再び熱を持ち始める。

白い液体を飲み干した彼女が、腕に滴り落ちた白濁をぺろぺろと舐めとる様子は、子猫が毛づくろいをしているようで、とても可愛らしい。

その間も小狐丸の楔はどくどくと脈打ち続けている再び固く熱を持ち始めたそれを優しく撫でて、主はうっとりと微笑んだ。

白く柔い彼女の下乳をぺろりと舐める。反対の胸は空いている手でぐにぐにと形を変えているが、中心にあるぷくりと紅い梅のようにふくれた果実には触れないよう周りをやわやわと揉むだけだ。甘美な刺激を求める主にはそれだけでは足りぬようで、すりすりと太ももをこすり合わせたり、熱っぽい視線で小狐丸の瞳を覗き込んだりといやらしくも可愛らしく欲しがっている。が、それに気づかぬふりをして、彼女の好いところからは少し離れた場所を刺激する。

「ね、小狐丸ちゃん、こっちも、」

ついに我慢の限界がきたのだろうか、そう言って主は小狐丸の手を取り自らの胸の中心部に触れさせてくる。このように彼女が大胆に求めてくることは殆どないため、これも酒の力かと感心する。
「忘れておりました、」と冗談交じりに笑い胸の飾りをぴんと弾くと「小狐丸ちゃんのばか、」と睨まれるが、目尻を紅くした彼女にそのような表情をされても、全く怖くはない。むしろ、

「誘っておられるようですね、ぬしさま。」
「い…やぁ、…そんなこと…、」

触って欲しいと強請りはするが、やはりまじまじと見つめられることには抵抗があるのだろうか、恥ずかしそうに目をそらし手で顔を隠そうとしているが、酒が回り正確な判断ができなくなっているのだろう、本来隠すべき場所である淫香を漂わせる秘孔は小狐丸が少し下をむけばすぐに視線にさらされてしまう無防備な状態だ。
小狐丸がするりと内腿に触れたことで、彼女もそのことに気がついたのだろうが、足を閉じようと身をよじるが、一度手に入れたものを離すほど狐は甘くはない。ぐいと膝を押し開き、秘部をまじまじと眺める。小狐丸の眼前の厭らしい花はひくひくと物欲しそうに震えながら愛液をこぽりと溢れさせ、彼が布団代わりにと敷いた羽織に水溜りのような滲みを作っていた。

「すっかり染みになってしまいましたね。」
「ぁ、…ぅ…、ごめんなさ…、」
「ふふ、謝られる必要はございませんよ。ぬしさまがこれほどまで感じてくださり、小狐も嬉しゅうございます。」
「、ゃ、ん……ん、……っ、——ん…」

人差し指と中指でくぱぁ、と入り口を広げると、幾度も中に白濁を吐き出したはずなのに綺麗な色をした内壁は、小狐丸を求めてひくひくと痙攣している。

「これでは、慣らす必要はありませんね」
「ひ、や、ぁあああっ〜〜〜っ…ぁっ、はいっ…って…ッ——」

とろとろと蜜を溢れさせる入り口に硬さを取り戻した滾りをぐぢゅんっ、と差し込むと、は肩を震わせ、内壁がきゅうと締まる。

ちゅ、くちゅ、ぷちゅ、

入り口をちゅくちゅくと弄ぶように抜き差しすると、最奥へ招き入れるように膣壁が蠢く。それに従うように腰を進めると、ぬぷ、じゅぽ、と水音が辺りに響く。

ぐちゅ、ぷちゅ

口で吸われた時のように、内壁がぢゅうぢゅうと小狐丸を吸い上げ、奥に子種を吐き出させようと蠢いている。
ちゅうちゅうと最奥に口付けるように先端を押し付けると、彼女も限界が近いのか手を伸ばし、小狐丸の首の後ろに回し、ぎゅうと抱き付いてくる。より深いところまで滾りが埋まった。

「——ぁ…うぁ、こぎつねまる、ちゃ、も…、ひぅ、」
「ん、く、…ぅ、ぬしさま、——」

熱い滾りがどくん、と爆ぜてどろりとした液体をびゅうびゅうと中に注ぎ込む。同時に絶頂を迎えたの中もきゅうきゅうと締まり、小さく白い背は弧を描く。
汗でぺっとりと額に張り付いた彼女の髪を避けて額に口付けると、まだ酒が残っているのか、それとも先程までの行為の余韻か、ふわふわと焦点の定まらない目で小狐丸を見つめ、微かに笑う。

爽やかな梅と強い酒の香りに、濃厚な情事の匂いも混ざり脳がくらりと溶けてしまいそうだ。