Naturesince.2010.07.04

HaNaBi

あたりが徐々に暗くなり始めている。屋台の並ぶ商店街はいつもよりも賑やかだ。かき氷だけではお腹は満たされない俺たちはイカ焼きや焼きそばなんかを調達しながら夕暮れの祭り会場を練り歩く。高校生くらいの浴衣の女の子達とすれ違ってが「浴衣で来ればよかったなぁ」と小声で呟くから、来年は浴衣姿が見れるのかな、なんて期待してしまう。……来年の俺たちがどうなっているかなんて、全くわからないけれど、声に出さずに期待しているだけなら許されるんじゃないかな。
歩いているうちに食べ物だけではなくくじ引きや金魚すくいなんかの屋台も増えてくる。こういう祭りに来るとピカピカした剣や腕輪が欲しくなるのはまだ俺が子供だからなのだろうか。色とりどりの光る物を振り回す子供達を少し羨ましく感じてしまう。そうやってじっとその色とりどりのピカピカを見ている俺に気が付いたのか、が「欲しいの?」とニヤニヤしながらこちらの顔を覗き込んできた。
「ちょっとだけ……何? 馬鹿にしてんの?」
「ふふ、別に〜」
「……なんだよも〜」
くすくす笑いながら歩く彼女はなんだかご機嫌だ。
「お揃いで買っちゃう? そんなに高いものじゃないし……使い捨てになっちゃうかもだけど、」
「えっ、お揃い!?」
「……いや、別に深い意味はないんだけど」
そう言いながらはフイ、と目を逸らして一際派手に光る屋台に足を向ける。「2本セットだって、」と指し示したブレスレットは赤と黄色の光が鮮やかだ。たぶん2本で重ね付けするようなやつなんだろうけど、一本ずつ腕につけてもそれはそれで悪くない気がする。
二人の小銭を合わせて購入した腕輪は、まっすぐになっている棒をパキパキと折り曲げたら光るタイプらしい。たぶん百均とかでも似たようなものを買えるんだろうけど、こういう場所で買うとなんだか特別っぽく感じる。夜闇で光る鮮やかな赤を巻きつけた腕を掲げて「いいじゃん」と呟くと、彼女は嬉しそうに目を細めた。こんなにコロコロ表情を変えるコイツのこと、初めて見たかもしれない。これも夏休みだからなのかな。そう思うと途端に、残り少ない夏休みがとても貴重なものに思えてきた。だって中学生として最後の夏だし。時間が巻き戻る前はとっくに8月は終わっていたのに、2回目でようやくそんな気持ちになるなんて、なんだか不思議だ。
そんなことを思いながら、『特別招待エリア』に足をすすめる。小学校の屋上に設けられた特等席は大型扇風機が設置されていて屋台の側よりも少しだけ涼しい。二人の手で光るピカピカのブレスレットに頬を緩ませながら、数段高いところに設置された席に座るため階段を登った。
二人の腕で鮮やかな色をした輪っかが仄かに光っている。