そんなわけで、花火大会当日は打ち上げが始まる数時間前に待ち合わせて、かき氷を食べてから『特別招待エリア』へ向かおうという話になった。何やらニヤニヤしている姉二人を睨みつけて黙らせて、カバンに虫除けとミニ扇風機を突っ込む。こんなもの普段は持ち歩かないけれど、無いよりあったほうが良いよな、たぶん。夜だとたくさん虫居そうだし。
じりじりと太陽が地面を照らしている。学校がある日は毎日会っていたけど、夏休みの間はしばらく顔を合わせていなかったから、こんなに短いスパンでと話すのは久しぶりでなんだか変な気分だ。
待ち合わせ場所の駅前に現れたアイツはいつもと少し違った。服装はもちろん私服なのだけれど、普段は二つ結びにしている髪の毛を器用に編み込んで一つにまとめている。風でふわふわと揺れる後れ毛が綺麗な金色の糸みたいに見えて、一瞬呼吸が止まった。「お待たせ、」と声をかけられると同時に戻ってきた夏の空気に、思わず深く息を吐いてしまう。
「……何、どうしたの?」
「……んーん、なんでもない」
は不思議そうに首を傾げる。誤魔化すように目を逸らして空を見上げると、雲がカルガモの親子みたいに見えて少しだけ和んだ。
「……何でもないなら、お昼過ぎたらかき氷屋さん人増えそうだし、早く行くよ」
「あ、うん」
視線を戻すとは俺の方に視線を向けることなくさっさと店の方へ歩き始めてしまっていた。無意識に伸ばしかけていた手を慌ててポケットに突っ込む。……まだ追いかけて手を繋ぐのは早いような気がするし。
いや、早いような気がするってなんだよ。自分の思考回路が謎すぎて、一人で勝手に笑ってしまった。