抽選会場は商店街の端に設営されていた。向日葵が描かれたのぼりが風でゆらゆらと揺れている。荷物を置いて身軽になった俺たちは一回分の福引券を握りしめてガラポンを回す順番を待つ主婦たちの列に並んだ。
「こういうの並ぶの久しぶりかも、」
「俺も」
「……英二はずっと部活だったもんね、」
「そだね〜、」
久しぶり、というか、家族以外とこういう抽選に並ぶのは初めてかもしれない。いつもこういう時って隣にいる人と何話してたっけ。もっと軽い気持ちで並んでいたはずなのに、どういうふうにしていたのかなかなか思い出せなくて少し焦ってしまう。手にした抽選券を握りしめる。カサカサと紙が擦れる音がやたら耳に響く。なんだか、どうすれば良いかわからない、みたいな気分になって挙動不審にキョロキョロと辺りを見渡してしまう。
「……そいえば、これって一等だったら何がもらえるのかな、」
「えっ、知らずに並んでたの? チラシに書いてあったじゃない」
「だって俺新聞のチラシとか見ないし……」
「……まあそうでしょうけど……ほら、あそこにも書いてあるよ、」
そう言ってが指さした拡大コピーされたチラシをまじまじと見る。派手なフォントで一等は高級電子レンジ、二等は電動自転車、三等はスペシャルクーポン、と記載されていた。電子レンジと自転車はわかるけど、スペシャルクーポンって何だ? 首を傾げていると「商店街の割引券とかじゃない?」と隣の彼女がスタッフの後ろに飾られたギフト券らしきチケットを指さす。
「あ〜なるほど、」
「……まあ、たぶん当たるとしてもティッシュかスナック菓子だと思うけど、」
「そだね〜、……お菓子あそこにおいてあるやつの中だったら何が好き?」
「……ポリンキー、」
少し考えた後に発せられた三角のお菓子の名前の響きがなんだかおかしくてつい笑ってしまう。それじゃあ積み上げられたポリンキーをもらいに行くか、と二人並んで一歩前に進んだ。
抽選に使われているのはよくあるガラガラ回して玉を出すアレだった。正式名称はよく知らない。「回していいよ」というの言葉に甘えてハンドルに手をかけぐるりと回すと、コロリと空色の玉が飛び出してきた。
「おっ、当たりだよお兄さん! 三等!」
カランカランと鐘がなる。一瞬時が止まったあと「えっ!?!? 三等!?」と思わず大きな声を出してしまった。手渡された封筒を受け取り、大慌てでの手を引いて抽選スペースの隅へ移動する。震える手で取り出した色とりどりのチケットには青をベースにした夏らしいイラストが描かれていた。
「かき氷の割引券と、」
「花火大会のチケット……?」
花火大会自体は普通に無料のものだ。だけど恐らく、このチケットに書かれている『特別招待エリア』はたぶんお金を払ってもなかなか座ることができないめちゃくちゃベストポジションなのだろう。なんだかワクワクした気分になってくる。
「……あのさ、、」
「何?」
「折角だから行かない? 花火大会」
俺の問いかけに、は少し考えるような素振りをしたあと「……いいけど、」とゆっくり頷いた。密かにガッツポーズする。これが夢なのか現実なのか未だによくわからないけれど、幸運なことが続いていることだけは確かだ。