Naturesince.2010.07.04

HaNaBi

太陽の光が眩しい。今が夢なのか、現実なのか、正直未だに判別はつかない。だけど、確かにパンケーキを口にすれば美味しいし、外を歩けばむわりと蒸し暑い。「暇ならお使い行ってきて」と母親に手渡されたメモをちらりと見て小さくため息をつく。色々考えた結果、記憶にある8月24日とほんの少し違うけど、大体は前と同じな気がしている。手の中のメモもほぼ前と同じだ。……そして、前と同じであれば、ここであいつとすれ違う。前の時は突然のことで声をかけても良いのか分からなくて黙って横を通り過ぎた。けど、なんだか今ならリベンジできそうなきがする。……いや、リベンジってなんだよ、って話だけど。
「……、」
「……英二、」
名前を呼ぶとくるりと振り返ったアイツと目が合う。眩しそうに目を細めた彼女は何やら重そうな袋を手にしていた。
「買い物?」
「……見て分からない?」
「うん、まあ、そうなんだけど、」
沈黙が訪れる。どこか居心地が悪くなる。テニス部の奴らとだったらこんな雰囲気にならない。もっとバカみたいな話をして笑っているのに、不思議なものだ。密かにため息をついて、何を言おうか悩んでいる俺より先に「あのさ、」と口を開いたのはの方だった。
「……あのさ、福引券、いる?」
「……福引券?」
「さっきレジでもらって……でも2枚足りないから回せないの」
そう言うと彼女はカラフルな小さな紙をこちらへ見せてくる。どうやら5枚集めれば1回商店街の福引に参加できるようだ。「へえ、」と呟きながらまじまじその紙を見る。それを眺めているうちに、ふと思い立って顔を上げた。
「……じゃあ俺もこれから買い物するから、2人の券合わせてこの後一緒に回しに行こうよ」
「こ、この後!?」
「ダメ? あ、冷蔵庫入れなきゃいけないものあるなら一旦帰ってからが良いかな」
「あ、え、っと、……うん、荷物置いたら、行く、」
「よっし! じゃあ用事済んだらここで待ち合わせね!」
「……わかった」
頷く彼女を笑って見送る。なんだか不思議な気分だ。
1回目の8月24日にはできなかったことを今からやろうとしている。上手くできるかはわからないけれど、できなくても構わない。もう一回少しだけ夏休みを過ごしているような気がして、なんだかワクワクした。