六月末のこの時期には珍しくよく晴れていたから、ちょっと遠出して海辺の街までやってきた。衝動的に来てしまったから、洋服は海らしさのかけらもない普段着のままだ。隣を歩く英二はすれ違うアロハシャツのカップルを見てちょっと羨ましそうな顔をしている。
「着たいの? あれ、」
「んー、着たい、ていうか、に着てみてほしい」
「……なるほど?」
「『なるほど』ってなんだよ、似合うよ、きっと」
目を細めて彼は笑う。そういうことを臆することなく口にしてしまうこの人のことを尊敬しているし、好きなのだけれど、その言葉を真正面から受け取るのはどうにも照れ臭くて、少し躊躇って、目を逸らしてしまう。
小道を通り抜けて、海のすぐ側の道に出る。「海だ!」と嬉しそうに声を上げた彼は、防波堤に駆け寄って、軽やかに飛んで、コンクリートをよじ登る。背伸びしてずっと遠くの地平線を見ている後ろ姿に「危ないでしょ」と声をかけると「俺バランス感覚良いから平気!」とこちらを振り返って笑う。
「もおいでよ」
そう言って手を差し伸べてくる彼が、海面に反射する日の光のせいか、なんだかいつも以上にキラキラしているように見えて、なんだかどきっとしてしまった。
「わ、私はダメだよ、たぶん落ちちゃう」
「大丈夫だって! 絶対の手、離さないから!」
躊躇いながらもその手を取って防波堤に登る。前髪を揺らす海風は涼しげなのに、繋いだ手はとても熱い。