ホラー映画を見ようといったのはどちらからだっただろうか。少なくとも私ではない。動画配信サービスの愉快なCMの後に流れ出した洋画は、全体的に薄暗い画面だから、時折流れる血の赤が妙に鮮やかだ。怖いものが得意なわけではない。だけど、手が触れ合うほど近くに自分よりも怖がっている人間がいるから、少しだけ冷静になってしまう。呪いの人形とやらがまた大きな斧を掲げる。振り下ろす音と同時に、英二の肩は大きく跳ねた。
「……そんなに怖いなら見なければいいのに」
「うーーん、そうなんだけど、」
「そもそも、なんでこれ再生したの」
「いや、なんというか、その、」
「……何」
歯切れが悪い。何か言いづらいことでもあるのだろうか。早く言って、という風に促すと、彼はクッションに顔を埋めてぼそぼそと照れ臭そうに声を出す。
「……不二が見せてくれた雑誌に『恋人との距離を縮めるにはホラー映画が最適!』って書いてあって」
「……不二くん何考えてるのほんと」
深々とため息をついて立ち上がり、彼が抱えているクッションをすっと取り上げる。静止する声を聞かず映画を停止して、テレビの電源を切った。そうして彼の横にまた座る。今度は肩が触れ合う距離だ。驚いたような表情で目を瞬かせるこの人は、本当に何も分かってない。ホラー映画なんかなくても、そうしたいって言われたら、できる限り応えるのに