Naturesince.2010.07.04

Short Story

たれみみうさぎ

たれ耳ウサギの耳のふわふわの毛が窓から差し込む太陽の光を吸収してきらきらと光っているそれは、隣の二つ結びに少し似ている気がする。まじまじ見比べていると不思議そうな表情でこちらを向く彼女はうさぎのように愛らしい目でこちらを見てくるわけではないけれど、寂しがりで繊細なところは少し似ている気がする。

動物に触れたり気軽に餌をやったりすることができるカフェは色々行ったことがあるけれど、ウサギカフェというものには初めて来た。白かったり茶色かったり黒かったりの毛玉が思い思いにニンジンをかじったりすやすや眠ったりする様子は可愛らしいけど、なんだか有江の膝の上にいる淡い色の毛をした一匹は俺のことがあんまり好きじゃないみたいで、撫でようとしてもニンジンをあげようとしても拒まれてしまう。

「猫カフェでも、ふくろうカフェでも、英二は大人気だったのにね」

「ハリネズミにも結構好かれてた! なんでかな~、俺と遊びたくないの?」

「遊ぶより寝ていたいんじゃない?」

が撫でたり餌をやったりするときは素直にいうことを聞いているのに、なんだかずるい。他のウサギを見に行こうにも、今日は満席でそれぞれの席に一匹ずつしかウサギをあてがう事ができないらしく、俺たちのところに来てくれるのはこのたれ耳だけみたいだ。これではますます面白くない。

手持ち無沙汰になった俺は隣にいる女の子の髪の毛に手を伸ばす。さらさらと長いそれはいつも見ているはずだけど、あらためて触れてまじまじと見ると丁寧に手入れされていてとても綺麗だ。そうしていると当然のことだが「何?」と少し睨まれた。「ごめんごめん、」と謝りつつも本気で怒られるわけないってわかってるから髪を撫でる手はそのままだ。

「ウサギがかまってくれないからこっちにかまってもらおうと思って」

「……私はこの子の相手で忙しいんだけど」

「じゃあ俺が好きにするから、はそのままでいて」

そう言うとは下を向いて何も言わなくなる。これはたぶん『いいよ』の合図だ。きっとこんな風に物言わぬウサギの気持ちの機微がわかるようになるには少し時間が必要なんだろう。思わず苦笑が漏れる。

「面倒くさいなあ~、ウサギって」

「そう?大人しくて可愛いじゃない」

俺の指の間を通り抜けていく二つ結びにされた髪の毛がきらきらと太陽を反射する。やっぱり小さなたれ耳ウサギと目の前の女の子は少し似ている気がする。