Naturesince.2010.07.04

Short Story

やなやつ!

ガコン、と自動販売機が音を立てた。腰をかがめて商品を取り出した越前リョーマは思わず眉間にしわを寄せた。

「……おしるこ?」

ファンタを買いたかったのに、彼の背より大きな四角い機械が吐き出したのは求めていたものとは正反対と言っても過言ではない飲みものだった。……そもそもおしるこって飲み物だったっけ?素朴な疑問を抱えそのスチール缶を片手に歩き始めた。お金がもったいないからファンタはお預けだ。置いておけば誰かが飲むだろう、なんて思いながら部室に向かう。道すがらテニスコートに目をやるとフェンスの外で見覚えのある少女が膝を抱えて座り込んでいた。

「……先輩?」

少女、は、びくりと肩を震わせて顔を上げ、「あ、越前くん…」と小さくつぶやいた。

「なにしてるんすか、また英二先輩とけんかでも?」
「……そんなんじゃないよ、」

立ちあがってスカートについた砂を払いながらは唇を尖らせた。「先輩、機嫌がいい時と悪い時の差が極端ですよね」と言うと「うるさい」ときつく睨まれた。そんな顔されても全然怖くないのに。

「越前君はさぁ、」
「なんすか、手短にお願いしますよ」
「……ほんと、嫌な奴だよね。自覚してるの?」
「はぁ?」

思わず間抜けな声を出してしまった。何を言っているんだろうこの先輩は。

「いや、嫌な奴なのは先輩のほうじゃないですか?」
「……うん、そう言われると思った。」

そう言って苦笑いしながらは空を見上げた。

「なんかさ、私、自分がすっごく嫌な奴だと思って」
「へぇ」
「少しへこんでた」
「……そっすか」

なんといっていいか分からずにいつも通りに軽く返す。普段ならそこで少し怒るだが、今日はいつもより少し優しい顔をした。

「理由、聞かないんだね」
「どーせ、英二先輩と大石先輩が仲良すぎて腹が立った、とかそんなんでしょ?」
「うーん、まぁそんなかんじかな」
「こわいっすねー、女の嫉妬って。」
「うるさいよ越前君」

くすくす笑う彼女に「もういいんすか?」と聞くと「いいよ、」と返された。

「だって、私より越前君のほうがずっと嫌な奴だもん」
「先輩、そういうの五十歩百歩って言うんですよ」
「うん、もうそれでいいよ」

今日はやけに素直だなぁ、と越前は思った。いつもこうなら、彼女や、彼女と彼女の幼馴染である彼の関係のことを『めんどくさい』と思うこともなくなるだろうに。

「越前君、なんかいま失礼なこと考えてるでしょう?」
「あ、ばれました?まぁ、別にいいんですけど」

にやり、と笑うと「本当に嫌な奴だなぁ」と感心された。失礼なのはどっちだ。と溜息をついて頭を抱えようとして気付く、

「……そうだ」

思い出したように声を上げると「なに?」とは不思議そうに首をかしげた。

「先輩、おしるこ、飲みます?」