素敵な人

 一つ年上の男の先輩のことが好きだ。恋愛感情とか、男と女だとか、そういうのは通り越して、もう人として好きだ。大好きだ。尊敬している。……そのようにいうと先輩は……タカさんは、困ったように笑うのだけれど。

 いや、『困ったような』じゃなくて、本当に困っているのだろう。タカさんは優しい。そして賢い。私が「好き」だと言うと、色々なことを考えてしまうのだろう。テニス部のこと、同級生のこと、後輩のこと、実家の寿司屋のこと、これまでのこと、これからのこと。

 多分、男と女的な意味では、タカさんは私の『好き』を受け止められないんだろう。色々とたくさん考えて「俺はきっと、岩淵のこと大事にしてあげられない、」って言うんだ。ごめん、って、頭を下げて。タカさんみたいな優しい人が、人の事を誰より思うことができる人が、人を大事にできないわけないのにね。彼はきっと、テニスを辞めた後の未来の自分を見据えてその言葉を吐く。

 私は、タカさんがそうやって謝る姿なんか見たくないから、いつも「タカさん、好きです!」の後に「尊敬してます!」と付け加える。だって本当のことだし。これなら、頭を悩ますことはない。きっと大丈夫。それでも困った顔をする彼は、尊敬してますなんて台詞俺には勿体無いだなんて思っているんだろうな。嘘偽りなく、誰よりも、あなたにふさわしい台詞なのに。