拝啓、うちの部長さま

 何がどうなっているのかよくわからないけれど、氷帝学園の部長がうちの部長と入れ替わった。千石が「青学の乾くんの汁のせいで……」とかよくわからないことを言っていたけれど、要するに今目の前にいる南健太郎の姿をした人物は、氷帝の跡部景吾であるらしい。なんだそれ。
 どうあれ、私にとっては好都合だ。私は南健太郎が好きだ。人間的な意味での好き、というのはもちろんだけど、加えて、恋心を拗らせまくってしまっている。好きすぎて最近は南と口をきくことすらまともにできないくらいの状態だから。眩しすぎて直視することができないんだよ、あんなに地味な人なはずなのに。部長とコミュニケーションをちゃんと取れないなんてマネージャー失格だ。

 部長が入れ替わっていても、普段通りの練習は続く。跡部も「山吹の機材はレトロで良いな」とか言いながらもみんなと同じトレーニングをこなしていた。褒めてるのか悪口なのかわならない。
 私もいつも通りのマネージャーの仕事を消化していると、好きな人の声に名前を呼ばれて思わずびくっと肩が震えた。声をかけてきた人物は好きな人でらないはずなのに。まあ、中身は他校の部長でも声は南そのままだから当然だ、忘れてた。声をかけてきた人物は「ほう、」と全てを察したように目を細める。そして練習メニューについて少し話をした後、ニヤリと笑って「なるほどな、」と続けた。
「なるほどな、つまりてめーは南のことが好きってわけか」
「は!?え!?違う!……いや、違くないけど!なんで急にその話になるの!?」
 焦る私を見る南……じゃない、跡部はなんだか楽しそうだ。こんな表情をする彼を見ることなんて初めてだから、少しドキッとしてしまう。……この人は南じゃないのに。
「心配するな、てめーの邪魔をする気は一切ねえよ。むしろ、この俺様が直々に告白できるよう協力してやろうと思ってるくらいだ」
「いい!いい!いらないから!!私のことは放っておいて!!」
 嗚呼、なんて面倒くさい人と入れ替わってしまったんだろううちの部長は。これなら普段通りのまともに話ができない状態の方がまだマシだ。早くここに戻ってきてくれないかな。