「苺チョコパフェスーパーデラックス、ひとつ。」

彼のその言葉に、私は少し顔をしかめる。なんて甘ったるそうな名前なんだ。「お前は?」と聞かれたので、「コーヒー、ブラック。」とつっけんどんに返す。
ウエイトレスのお姉さんは「かしこまりました」と注文を機械に打ち込んで立ち去った。

放課後丸井に「パフェ食いに行こうぜ」と誘われたことはこれが初めてではない。これまでは、何かと理由をつけて断ってきたが、今回ついにこのファミレスまで連れて来られてしまった。
丸井からの誘いを断る理由に使おうと思ってたのに「俺との用事はまた今度で構わないぞ」と言った柳くん、一生怨む。

案の定、席に運ばれてきたのはスーパーデラックスという名前も頷けるほど大きなパフェで、持ってきたお姉さんには失礼だが、思わず「うわあ」と声が出た。
それに嬉々としてスプーンを突き刺し、口に運ぶ丸井を見て、さらにげんなりとした気分になる。
「よくそんな甘いの食べられるね。」と呟くと「一口食うか?」とスプーンを差し出された。首を左右に振って断ると、彼は「ふうん、」と感心なさそうな返事をして再びもくもくとパフェを食べる作業に戻る。それをコーヒーを流し込みながらぼんやり眺めていると、不意に「あのさ、」と声をかけられた。

「……お前もしかして、甘いもの嫌い?」
「嫌いじゃないけどさ…。」

そう、嫌いではない。でも甘すぎる物は苦手…と言って、大人だと思われたいのだ。……本当は甘いものを食べたいのを我慢している。だから、丸井がおいしそうに食べている姿を見てイライラしてしまう。…やつあたりだというのはわかってる。

「それって、逆にガキっぽくね…?」
「うっさい、……丸井の食べ物の好みの方がガキだよ。」
「自分を偽らずに生きている俺の方がお前よりずっと大人だと思うぜぃ?」

確かにそうかもしれない、嘘で塗り固めて、ホントの自分を偽って、そんなんでわたしはちゃんと大人になれるのだろうか。

「安心しろよ」

そう言って、丸井は私の顎のあたりにそっと触れた。
彼の顔が近付いてきて、目を閉じる暇もない。唇に柔らかい物が触れる。肩を押して引き剥がそうとするけれど、びくともしない。口内にぬるりとしたものが入りこんできて、めちゃくちゃに荒される。舌を絡め取られ、歯列をなぞられ、背中にぞわりと鳥肌がたつ。
……苺チョコパフェスーパーデラックスって、こんな味なんだ。想像よりも甘くなくて、苺の酸味が爽やかだ。私たちがやっていることは全然爽やかではないけれど。

すっと丸井が離れていって、銀色の雫が糸を引く。何事もなかったかのように、彼は席に着く。だが、濡れた口元がその痕跡を物語っている。
彼は平然としているが、私はずっと呼吸ができないでいたから息も絶え絶えだ。丸井をおもいっきり睨みつけると、彼はにやっと楽しそうに笑った。

「ほら、子供はこんなコトしないぜ。」

ばかやろう、ここはファミレスだぞ。

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