
勝利に執着するその姿勢を、例え相手が先輩であろうと後輩であろうと勝利奪い取ろうとするその姿を、素直にかっこいいとおもった。あの人のテニスをずっと見ていたいと思った。あの人のそばに居たいと思った。
海堂先輩のテニスに一目ぼれして男子テニス部にマネージャーとして入部して早2月ちょっと。仕事も覚えてきたし、海堂先輩に名前覚えてもらえたような気がするし、順調な滑り出しなんじゃないかな。
そんなことを洗濯カゴを運びながらぼんやり考えていたら、すぐ横のコートで打ち合いがはじまっていた。海堂先輩と桃城先輩だ。
思わず足を止めて、フェンス越しに彼を見つめる。サーブを打って、走る。それだけの動作がこれほどまでにうつくしいものなのだということを知ったのも、彼のテニスを見てからだ。
「君が海堂のことを意識している確率74%。」
「うえっ、乾先輩!?」
あまりにも真剣にコートのことを見ていたから、後ろに立たれていたことに気付かなかった。眼鏡が反射して表情はよくわからないがなんとなく雰囲気でニヤニヤしているということが伝わってくる。
海堂を振り向かせたいのならば協力してやってもいいが、という乾先輩の言葉にぶんぶんと首を横に振る。この人に頼んだら大きな見返りを要求されそうな気がしてならない。
「そうか、それは残念だ。」
本当に残念そうな顔をする乾先輩を見てたら少し申し訳なくなってくるけど、汁の実験台にされたりしたらたまったもんじゃない。
洗濯カゴを手にそそくさ、とその場から立ち去る。
さっさとこの大量の洗濯物を干してしまおう。パンパンってしわを伸ばして、ロープにかけて、おひさまの光にたっぷり当てて、それで海堂先輩がちょっとでも「今日のタオルやわらかい」とか思ってくれたら嬉しいなぁ。…でも、海堂先輩に『やわらかい』って言葉は全然似合わないなあ…。
「ちなみに、海堂が彼女のことを意識している確率は83%。そして、二人が両想いである確率は97%だ。まあたぶん、あいつらはお互いに気付いていないだろうけどな。」