青学のジャージの赤いラインが好きだ。大石くんが着ているものだったらもっともっと好きだ。

そう言ったら、大石くんはちょっと驚いたような顔をしてから「ありがとう」と微笑んでくれた。あと「そんなこと言われたのは初めてだよ」とも言われた。

大石くんは冗談だと思っているかもしれないけれど、私の眼には大石くんが着ている青学のユニフォームはだれのものよりもきらきらしてて、特別なものに見えるんだよ。

そんな大石くんが試合している姿を、ずっと見ることができると思っていた。青と白と赤いラインのユニフォームを全国大会の舞台で見ることができるって、信じてた。

「手首のケガ!?」

テニス部の部長である手塚くんが九州に行くことになった、ということ同時に聞かされたその情報は良い知らせとはとても言い難いものだった。

「あぁ、2週間程度で治るらしいけど…それまでは試合、できないな。」

応援してくれてたのにごめん、という大石くんの声を聞いていると、じんわりと視界がにじんできた。
でも、ここで泣くわけにはいかない。
だって、わたしより大石くんのほうがずっとずっと辛いはずだし、ずっとずっとこのことを重く受け止めているはずだ。
部長である手塚くんが居ない間は部をまとめなければならないこと、それと同時に、自分の手首をなおさなければならないこと、そのほかにもさまざまなことが重なって、押しつぶされそうになっているはずだ。そんな彼の心の負担を少しでも軽くしたい。

「がんばれ、大石くん!」

私にできることって何だろう。そうやってもやもや考えても、結局、私には応援するということしか思いつかなかった。でもそれで、大石くんが少しでも笑ってくれるなら、ちょっとは私の声も価値があるんじゃないかな。

夕焼けをバックにして立つ大石くんにスッと拳を差し出す。一瞬面食らったような顔をしたものの、「あぁ!」と力強くうなづいて拳を合わせてくれた。

その時の彼の泣きそうな笑顔を、たぶん私は一生忘れない。