
「あ、ひよしくんだ!ひよしくーん!!」
その声を聞いて、そして横断歩道の向こう側でぶんぶんと手を振る人物を見て、おもわず「げ」と呟いてしまった。だ。あいつと関わるとロクなことにならない。逃げようにも、は信号が青になったとたんにこちら側に渡ってきた。そして、握手するように俺の手をとってぶんぶん振る。正直痛いし。腕も、周りの視線も。
「日吉くん!こんなところで会えるなんて偶然ですね!お買い物ですか?お散歩ですか?」
「別に…」
「休日も会えるなんて運命ですかね?あぁ、でも私は日吉くんではなくて他に好きな人がいるので申し訳ないですけど日吉くんとお付き合いすることはできないんですよ。他を当たってください。」
ニコニコ笑い、マシンガンのように喋るこいつに、圧倒される。しかも、告白した覚えが無いのにいつのまにかフられていた。わけがわからない上に不愉快極まりない。
「っていうか日吉くん」
「なんだ」
「お休みの日は眼鏡なんですね!新鮮ですね!ギャップ萌えですね!」
「黙れ。」
頭を抱えると「日吉くん?どうしたんですか?頭痛いんですか?」と顔をのぞきこまれた。誰のせいだと思っているんだ。
「用が無いなら帰ってくれ。俺は急いでるんだ。」
「あっ、そうですよね……ごめんなさい……。」
しょんぼりと尻尾が垂れ下がった子犬のような表情をするを見て、少し罪悪感を感じる。そんな風に思っていては、まともにこいつの相手をしていられないのはわかっているから、必死で頭を振って小動物のイメージを振り払う。そうだ、こいつは同じ学年の煩い女子だ。
そんなことを考えていたらが「あっ、でも一つだけ言わせてください!」と言って俺の手をぱっと話した。「なんだよ、」と促すと「えへへー」と嬉しそうに笑う。
「あのですね、眼鏡の日吉くんも素敵ですけど、私はいつもの日吉くんがやっぱりいいなぁっておもったので、学校にはいつもの日吉くんできてくださいね。」
「は?」
「それじゃ!」
そう言って、は足早に立ち去って行った。まるで嵐のようだったな、とぼんやり思う。
それにしても、最後のあのセリフはどういう意味だったんだろう?
