電車のボックス席に、向かい合って座る。
私は窓の外の景色をぼんやりと眺め、不二は少し古びた雰囲気の本のページを捲っていた。
お互いになにも喋らないけれど、それは気まずい沈黙ではなかった。

不意に、爪先同士がふれあう。それまで下を向いて本を読んでいた不二は顔をあげて、すこし笑った。

「退屈じゃない?」
「全然。」
「よかった、」

僕が全然相手をしないから拗ねちゃったのかと思ったよ、と不二は言う。そして、静かに本を閉じて、私の顔をまっすぐ見た。目をそらしたい、けど、そらせない。

「ねぇ、、」
「な、なに?」
「このまま、終点までいってしまおうか。」
そう言って彼は私の手をとって微笑んだ。私はゆっくりと頷く。
わかっている。本当は途中で降りなきゃダメだって。でも、彼とふたりだから、神様はきっと許してくれる、なんとなくそんな気がした。