
「いつもお前の方が先に来てるよな。」
そう日吉に言われて、ドキっとした。日吉に会うのが楽しみで楽しみで、いつも1時間以上も前から待ち合わせ場所で私がそわそわしていることを彼は知らないし、教えてもやらない。だって、そんなこと言ったら日吉は絶対鬱陶しがる。日吉のそんなところも好きなんだけど、何か私だけが好きみたいで少し悔しい。
正直、日吉が何を考えているかよくわからない。よく意地悪なことを言ってくるし、私よりもテニスの方が優先だ。でも、ちょっとでいいから、すこしでいいから、私の気持ちにレスポンスを返してくれたっていいんじゃないだろうか。私がいくら「好き」って言っても日吉は「あぁ」と返すか、うるさそうに眉間にしわを寄せるだけだ。もしかしたら、嫌われているんじゃないかとさえ思えてくる。なにこれ、すっごく不毛。
日吉に関する云々を、なんとなくそれとなく同じクラスの鳳に相談してみた。鳳は少し考えるようなそぶりをしてから、私の目を真っ直ぐに見て「それってさ、日吉は照れてるんだと思うよ」と真面目な顔で言い放った。照れてる?あの日吉が?まさか。いくら長く日吉と一緒に居る鳳の言葉でも、あまり信じられなかった。鳳はやさしいから私を傷つけないようにそういうことを言っているのかもしれない、とか考えてしまうのだ。
鳳とぐだぐだ話していると、いつの間にか私たちの横にむっつり顔をした日吉が立っていた。「何を話していたんだ」と機嫌が悪そうに聞く日吉に、鳳が「日吉のことを話していたんだよ」と言うと、日吉は少し驚いたような表情をした。
「俺のことを?」
「うん、日吉がのことどう思っているのかなって話。」
さらっとそんなことを言う鳳を目線で制止しようとしたが、にっこり笑っただけですぐに日吉の方を向いて「で、どうなの?」とか聞き出した。鳳はやさしいけど空気は読めない、ということは今後の教訓になりそうだ。顔から火が出そうで日吉の方が見れない。
たっぷりと間を開けて、日吉は「……感謝はしている。」とぼそぼそ呟いた。鳳が「……それだけ?」と重ねて聞くと、日吉はキッと鋭い目で私を睨んできた。あぁ、やっぱり嫌われているのかなぁ、とぼんやり思った私は、その時こっそり鳳が携帯で撮った写真に真っ赤になっている日吉の耳がうつっていることをまだ知らない。
