時々、ふと『もしかしたら、彼にはもっとふさわしい人が居るのではないか』と考え苦しくなる。私よりはがさつだし、かわいくないし、女らしいとはとても言い難い。もっとかわいくて、おしとやかで、彼のことを思ってくれるような子がこの世にはいるんじゃないだろうか。私がそんなことを言うとと、忍足は「せやな」と大真面目な顔で頷いた。

「確かに、と跡部が付き合ってるって聞いた時は、一足早くエイプリルフールがやってきたんかと思ったわ。」

おい忍足、なんてことを言ってくれるんだ。確かに私は『跡部と自分がお似合いではないかもしれないどうしよう』的な事を言ったけど、自分でいうのと他人に言われるのとでは重みが全然違う。ショックを受けて固まっていたら「なんや、中途半端な変顔やなぁ」と笑われた。別に好きで変顔しているわけではないし、そもそもこんな顔をしているのは誰のせいだと思っている、と問いたい。

「まぁ、そんな傷つかんといて。この話にはまだ続きがあるんやで。」
「続き?」
「せや。まぁ、さっきも言ったけど、最初は『なんで跡部がこんなちんちくりんを選んだんや?』って思った。がさつやし、顔もフツーやし、足も綺麗やないし」

忍足の一言一言が私の心にぐさぐさ突き刺さる。なんだこいつは、私の精神を崩壊させる気なのか?それとも傷ついている人を見て、喜んでいるドSなのか?どっちにしろいやだけど。そんなことを考えながら涙目になっていると、彼は眼鏡の奥の瞳を細めて「でもな、」と続けた。

「でもな、と話してる跡部を見て分かった。あいつ、お前と話しとる時はめっちゃ楽しそうな顔してんねん。そらもう、俺らと話しているときは見せないような笑顔も全開や。」

「なんというか、お前のそういうところに跡部は惹かれたんとちゃうか?」

「跡部がを選んだんやから、もっと自信持ちや。今は俺も……というか、と跡部のこと知ってる奴らは皆、2人はお似合いやって思うとるで。」

そう言って、忍足は私の肩をぽんと叩いた。

に手を振って別れた後、「余計なこと言ってんじゃねーよ」という声に振り返ると、そこには我らがキングが腕を組んで立っていた。どうやら、かなりご立腹のようだ。
最近、跡部とがどうもぎくしゃくしているのはなんとなく感づいていた。『そのうち本人たちがなんとかするだろう』『放っておこう』とテニス部の奴らとひそかに協定を結んではいたが、相談を持ちかけられてしまってはそれに応じないわけにはいけない。鈍いと素直じゃない跡部の様子を見てやきもきしていた俺としては願ってもない機会だったんやけどな。そんなことを考えていたら、跡部は「バーカ」といつもの自信満々な声で言い放った。

「他人に世話してもらうほど、落ちちゃいねえよ。アイツが気付くか、俺が気付かせるまで、外野が口出しすんな。」

あぁ、やっぱりこいつは跡部景吾だ。こんな俺様野郎と付き合っているは、俺たちが意識していないだけでもしかしたら相当な大物なのかもしれない。
思わず噴き出したら「何笑ってんだよ」と跡部に頭を小突かれた。