バカみたいにカラっと陽気な天気だった。空気が乾燥しているせいか、空が高く見える。だが、気候に反して、テニス部部室はどんよりじめっとした空気が流れている。それもこれも、マネージャーであり後輩であるが暗いオーラを垂れ流しながら膝を抱えてうずくまっているせいだ。静かだから誰も居ないと思っていた俺はドアを開けたとたんやけに落ち込んでるコイツを発見し、驚いて思わず膨らましていたガムを割ってしまった。
コイツが何でこんな様子なのか、俺にはまったく分からないし、見当もつかない。

「どうしたんだよ」

声をかけても、うんともすんとも言わない。ちょっとイラっとしたから、無理やり顔を覗き込んでやったら、今にも泣きそうな表情で、おもいっきり睨みつけられた。

「ぶっさいくな顔。」
「うるさい。」
「もともと酷い顔がさらにひどくなってやがる。」

そう言って少し笑ってやるとはふいと目をそらして唇をかみしめた。「そんなことしてたら血が出るぜ」と窘めると、また「うるさい」と言われた。まったく、うちには手のかかる後輩が多すぎる。頭をなでてやると思いっきり手を振り払われた。素直じゃない奴。

「ねぇ先輩、からかいに来たなら出て行ってもらえますか?」
「別にからかいに来たわけじゃねえよ。」
「じゃあ何しに来たんですか?」
「部室に着替えに来て何が悪いんだよ」

そう言って、汗でびしょびしょになった自分が今着ているユニフォームを示すと、は「じゃあ勝手にしてください。別に見たりしないんで。」とまた膝を抱えて下を向いた。
もしかして、泣いてるんだろうか?
いや、こいつのことだから、泣けと言われても泣かないんだろうな。まぁ、俺も無理に泣けとはいわねぇよ。その代わり、いろんなものを貯め込んで貯め込んで、すっかり重たくなってしまったその肩を叩いて、前を向かせてやる。地面の方ばっか向いてたら、空なんか見えない。せっかくいい天気なのに、そんなのもったいないだろぃ?

「ほら、笑えよ。」

俺が両手でその頬に触れると、「そんなこと急に言われても困るんですけど」と言いながらも、はくしゃりと表情を緩めた。ほら、やっぱりお前にはそういう顔の方が似合うよ。