

「さて、山本くん、今は何時かな」
「十一時半…」
「約束の時間は何時だったっけ」
「十時…」
「どうしてこんなことになったのかな」
「寝坊…」
「…君は実にバカだな」
「わりぃ…」
「お昼ご飯をおごってくれたら許してやろう」
「…安いな」
「一番高いもの頼むから覚悟しとけ」
「まじか」


「で、何の映画見たいんだ?」
「マクロス!」
「…オレと二人できてそれかよ…」
「マクロスだめ?ランカちゃんかわいいよ?シェリルかわいいよ?」
「そういう問題じゃなくて…」
「じゃあ、コナン見る?それともプリキュア?」
「なんで全部アニメなんだよ」


「なんで映画見ながら寝るんだよ、ムードのかけらも無い男だな」
「コナンの映画でムードも何も無いだろ」
「でも寝るのはなしだろ!」
「だって、お前が『コナンくんかっこよかったよね』とか言ってるの見たくないし」
「アニメの中の小学生相手になに言ってるの!?」


「あ、あれかわいい」
「どれ?」
「あそこの、マネキンが着てるヤツ」
「ふうん…似合うんじゃね?」
「あー、でも今お金無い…」
「おねーさーん、これのコイツに合うサイズってどれ?」
「ちょ、山本なにやってんの!」


「さっきお店の人に『彼氏さんかっこいいですね』って言われちゃったよ」
「へぇ」
「あれ、あんまり嬉しそうじゃないね。いつもはかっこいいって言ったら引くくらい喜ぶのに」
「…そんなに喜んでるか?」
「うーん…、今のはちょっと言いすぎたかも」
「おい」
「で、なんで?」
「そりゃ、見ず知らずの誰かに言われるよりお前に言われた方が百倍嬉しいし」
「へ…へーぇ…」
「どした?」
「やっぱり山本ってかっこいいね」
「…この流れで言うなよ」