お庭で花を見ている大好きなあの人を見つけて、私は急いでかけよりました。今日は特別な日。何日も前から用意した贈り物を彼に渡さなければなりません。目が合うと彼は「」と私の名前を呼び、優しく微笑んで頭を撫でてくれました。その大きな手で撫でられるのが心地よくて私も思わず目を細めました。

「どうしたんだ、。そんなに慌てて。」
「あのね、山本さん。山本さんに渡すものがあるの。」
「オレに渡すもの?」

彼・山本武さんは驚いたように目を見開きました。それもそのはずです。だって、この贈り物のことは、ずっと私だけの秘密にしていたのですから。…とはいっても、優しい目をした私たちのボスは何もかもお見通しだったようですが。

「山本さん、2月14日はなんの日かご存知?」
「2月14日…?」

山本さんは私の言葉を繰り返し、少し考えてから、はっと何かを思い付いたような顔をしました。そうです、2月14日は恋人たちの記念日。

「チョコでもくれるのか?」
「チョコレート?」
「…あぁ、こっちじゃチョコレートじゃないのか」

そう呟いて山本さんは、日本では2月14日にお世話になっている人にチョコレートをあげるのだ、と教えてくれました。成る程、それでは来年は山本さんにチョコレートを用意しなければですね。

「で、はオレに何をくれるんだ?」

問いかけられて、思わず笑みが漏れました。もっとも、山本さんと居るときは彼につられて常にニコニコしてしまいますから、笑みを深めた、という方が正しいのかもしれません。

「イタリアでは、2月14日は、お花やお菓子、ギフトボックスなんかを送りあうんです。」
「へぇ」
「でも、私、山本さんが何を渡したら喜んでくれるのかわからなくて…」
「オレはがくれるものならなんでも嬉しいよ。」

山本さんは優しい人です。それも、作り物の優しさなんかじゃなくて、本物の。一緒に居ると甘くてあったかい気持ちになるのです。まるで、熱いコーヒーにミルクと砂糖を入れたみたい。だから、私は彼のことがすき。

「山本さん、あのね」

私からのバレンタインのプレゼントは、私自身です、なんて言ったら、彼はどんな顔をするでしょう。笑ってくれるかもしれません。驚いた顔をするかもしれません。それとも、もしかしたら…彼のそんな表情を思いながら、私は唇を開くのでした。

その淡い桃色に口付けしたいと言えば彼女はどんな顔をするだろう