
幼稚園児と先生//鳳長太郎
「よう、長太郎。」
「あれ、宍戸さん!?なんでココに!?まさかお子さんが……」
「ちげえよ。今日は兄貴のとこの子の迎え。」
「あぁ、なるほど。」
「っていうんだけど、どこに居るかしらねぇか?」
「あ、お兄さんの娘さんってちゃんだったんですね。それならあそこに……」
「ちょーたろーせんせー!」
「あ、きたきた。ちゃん、お迎えが来たよ」
「えー、亮じゃん。パパとママは?」
「仕事だとよ。ほら、、帰るぞ」
「やだー!ちょうたろうせんせいともっと遊ぶの!」
「たっく……悪いな長太郎、こいつ、一度言い出したら聞かないんだ」
「大丈夫ですよ、宍戸さん。……ちゃん、」
「なぁに?」
「明日また必ず会えるから、今日はバイバイしよう?」
「ちょうたろうせんせいは、さみしくないの?」
「え?」
「は、さみしい。」
「……困ったなぁ、」
「困ったなぁ、じゃねえよ!全然大丈夫じゃなかったじゃねぇか!」
(110904)

家庭教師と生徒//柳蓮二
「先生わか「『わかりません』とお前は言うだろうが、まだ問題を解きはじめてから1分15秒しか経っていない。もう少し考えてみればすぐに答えは導き出せると思うのだが」
「…先生ひどい」
「そう言うな。そうだな、このページを間違えずに全て解けたら俺からお前に何かご褒美をやろう。」
「え!?本当に?」
「あぁ、楽しみにしておくといい。」
(110722)

バッテリー//阿部隆也
「阿部はさ、三橋のこと大好きだよね」
私の言葉に阿部は「はぁ?」と間抜けな声を上げた。私はそれを見ながら真剣な表情で言葉を続ける。
「だってさ、私よりも三橋優先だし。っていうか、私、最近阿部にかまってもらってないし。」
「そりゃ、まあ、部活でバッテリー組んでるしな」
「やっぱり私より三橋の方が好きなんだね…」
「なんでそうなるんだよ」
「私は三橋になれないもんね。阿部とバッテリーになれないもんね。」
「別にそんなことねぇだろ」
それだけ言うと、阿部は深く溜め息をついて私に向かって何かを放り投げてきた。グローブと、白いボールだ。そうして彼は驚いている私から数メートル離れ、面倒くさそうにその場にしゃがんでミットをかまえた。
「ほら、こうすりゃ俺達いつでもバッテリーになれるだろ?」
そういう意味じゃないんだけどなぁ、と密かに思いながらも、私は彼のミットに向かって白球を投げ込んだ。
(110722)

シンデレラと王子様//アメリカ
お伽噺の主人公なんてろくなもんじゃない。台本通りのストーリーなんてまっぴらごめんだ。
それでも、私はシンデレラ。意地悪な姉さん達や継母にいじめられてる。…っていう設定。実際はそうでもないんだけど。掃除も嫌いじゃないしね。
で、今日は姉さん達はお城に舞踏会に行くらしい。さっぱり興味が無かったから、笑顔で見送らせてもらったんだけど、眉毛が特徴的なツンデレ魔法使いの策略で何故か私まで舞踏会に行くことになってしまった。「綺麗にしてやったんだから感謝しろよな!あと、12時になったら魔法は解けるから注意しろよ!こ、これは別にお前のためじゃなくて、俺のためにやったことなんだからな!」って、それならやるなよ、と言いたいのだけれど。
あぁ、神様。これもシンデレラの宿命なのでしょうか。
*
そんなこんなで、私はお城にやってきた。シンデレラなのだから、王子様とダンスを踊って、ガラスの靴を片方落として帰らなければならない。何それすっごく面倒くさい。溜息をつきながらダンスフロアを見渡していると、キラキラした髪の毛をした男の人と目があった。そして、彼は私を見るなり目を輝かせてずんずんこちらに近づいてきて、そしていきなり手を握られた。
「ワオ!君、すっごくキュートだね!!俺と今から踊らない?」
……なんだこの超展開は。
*
マシンガンのように喋る彼の話を聞くと、どうやら彼がこの国の王子様らしい。イメージとはかけ離れた王子様に唖然とするとともに、まぁシンデレラがこんなんだから仕方がないか、とも思ったりする。
それでも「立ち話もなんだから踊ろうか」と手を差し出してきた彼に少しキュンとしてしまったのは私がシンデレラであるからの不可抗力だと信じたい。
*
なんやかんやで時間は流れ、12時の鐘が鳴る。私はここで帰らなきゃならない。だって、シンデレラだもん。せっかく書けてもらった魔法が解けてしまう。あいさつもそこそこに駆けだす私の後ろ姿を見て、王子さまが焦っているのが振り返らなくてもわかる。
「必ず君を見つけてあげるよ!俺はヒーローだからねっ」っていう声が遠くから聞こえた。貴方はヒーローじゃなくて王子様でしょう?なんて、言えなかったけど、その言葉を聞いて確かに私の頬は緩んだ。
シンデレラも、悪くないなって。
(110828)

赤ずきんちゃんと狼//ロマーノ
「ほら、早く逃げろよ。」
「どうして逃げる必要があるの?」
「俺がお前のこと食べるからに決まってるだろ?」
「私、貴方に食べられちゃうの?」
「当然だろ」
「ううん、でもそれも悪くないかもしれないわね。」
「お前俺が怖くないのかよちくしょー」
「怖くはないわ。怖いわけないでしょう。大きい耳に大きい口、毛むくじゃらのかわいいおおかみさん。」
(110906)

アンドロイドとご主人様//財前光
科学の限界を超えて俺の元へやってきたロボット「人型アンドロイドN-058B型」。通称「」ちゅーらしい。
機械を扱うときはじっくり説明書を読むより実際に触って慣れていく派やから、とりあえずコイツに歌でも歌わせてみることにした。だが、表情一つ変えずにコイツは「歌えません。」とか言ってきた。なんやねんそれ。
「え、歌えへんの?」
「当然です。ご主人様が購入されたのは人型アンドロイドN-058B型。ボーカロイドではありません。」
「…それならお前、何ができるん?」
「何も」
「何も!?」
「はい、ですが、ご主人様が教えてくだされば、私は何でもできるようになります。」
「所謂調教というやつです」と無表情のままは言う。
なるほど、そういうことか。せやったら、俺はお前を調教して世界一の歌姫にする。それしか考えられへんやろ。
(110815)

天使と悪魔//切原赤也
先輩は天使みたいだ、と、俺は思っている。長い髪の毛がさらさらしてて、白いワンピースがよく似合う。それに、誰にでもやさしくて、その笑顔を見てたら幸せな気持ちになれた。
放課後、テニス部の練習が終わったあとは、合唱部である先輩が居残り練習しているのを音楽室のピアノの椅子に座って聞くのが俺の日課になっていた。先輩の歌を聞くと、どんなに部活で疲れていても、元気になれる。そんな気がしていた。「『天使の歌声』ってヤツっスね」と思わず呟くと、彼女は「そんなんじゃないよ。」とはにかんだように笑った。
「それにさ、赤也くんだって、テニスすごいじゃない」
「でも…俺、テニスで人を元気付けたりすることできないし…」
そう、だから俺は『天使』にはなれない。やっぱり俺には『悪魔』がお似合いなんだ。そう思って自分の爪先を見つめていると、先輩が「ねぇ、赤也くん、」と声をかけてきた。返事をする代わりにゆっくり顔をあげる。するとすぐ目の前に先輩の顔があって、俺は思わず二、三度まばたきしてしまった。
「赤也くん、知ってる?」
「…何を?」
「大天使ミカエルは甲冑を纏って天の軍団の先頭を行く絵が多く描かれたの」
「軍の先頭?」
「そう。赤也くんに少し似てると思わない?」
だから赤也くんも、もしかしたら天使なのかもしれないね。先輩はそう言ってまた笑う。その笑顔がすごくきれいで、やっぱり先輩の方が天使なんじゃないか、なんて、こっそりと思った。
(110722)

幼馴染//宍戸亮
「喉乾いた」
「私、お茶持ってるよ、いる?」
「まじで?サンキュ、」
「どういたしましてー。ま、私の飲みかけでよければどんどん飲んでよ」
「ぶっ」
「あれ、どしたの宍戸、」
「おま、ちょ、これ、飲みかけって……」
「おやおや宍戸君、もしや間接ちゅーとか気にしちゃってるのかな?」
「ばっ、ちげーよ!」
「心配しなくても私は同じペットボトルで飲み物飲むのとか平気だし、気にしてないから大丈夫だよ。ま、赤の他人は兎も角、宍戸だしね。幼馴染じゃん。今更じゃん。」
「そう言う問題じゃねーよ!」
「照れるなよ青少年!あっ、そのお茶残り全部あげるから!部活頑張れよー!」
「え、あ、ちょ、ちょっと待て!」
お前が気にしなくても俺が気にするんだよ馬鹿野郎!
(110831)

人間とポケットサイズの妖精
その日の気候はあまりにも心地よかったから、みんなが練習しているというのに、洗濯物を畳みながら部室でうっかり眠ってしまっていた。そして気づいたら、私の体はいつのまにか小さく縮んでしまっていた。所謂コナン君的な縮み方ではなく、姿かたちはそのままでサイズだけ学生服のポケットにすっぽり入る大きさになってしまったのだ。どちらかといえばアリスみたいだな、とぼんやり思う。と、その時、練習中だから誰も入って来ないであろうと思っていた部室のドアががチャリと音をたてて空いた。そこから入ってきたテニス部の中でも一際縦に長い影。千歳千里だ。ぬっとドアから顔を出した彼とばっちり目が合う。私の姿を見て体を硬直させ、目を真ん丸にする千歳にどう接して良いのか全く分からず、とりあえず「ハァイ」と片手を上げてみると彼は数度瞬きした後、ダッシュで近づいてきて私の両手を取った。
「アリエッティ!」
「はぁ!?」
「の正体はアリエッティだったとね!?」
どうやら千歳は大いなる勘違いをしているようだ。まぁ、確かにジブリ映画に登場するあの小人の女の子はこのくらいのサイズだったのだけれども。瞳をキラキラさせながら私を見つめる千歳にこの状況を正しく説明できる自信も全くないので私は苦笑いするしかない。
とりあえず、この体のサイズに合う服が必要だ、ということに彼が早く気づいてくれることを願おう。
(110727)

大富豪と一般人//向日岳人
『大貧民』だとか『大富豪』だとか、地域によって呼び方は様々なあのゲームを、私たちは昼前に部活が終わったときから今まで延々と続けている。で、この男・向日岳人は延々と一位をとり続けている、いわゆる大富豪だ。そういうわたしは、一位でもなく、ビリでもなく、いわゆる一般市民の座を延々と守り続けている。そろそろ、ジローも寝てしまいそうだし、延々と大貧民の座を守り続けている宍戸がかわいそうになってきたし、疲れたし、お開きにしようと私と岳人はトランプを片付け始めた。しつこく「もう一回!」とか言ってくる宍戸はこの際無視だ。今日は運がなかったんだよ、諦めろ。
ぐちゃぐちゃになったトランプの向きを、めんどくさそうにそろえながら岳人は「一度でいいから本物の大富豪になってみたいぜ」と呟いた。
「大富豪ねぇ、大富豪になって岳人はどうするのさ」
「あー、一生遊んで暮らす?」
「今だって十分遊んでるじゃん」
「でも、大人になったら遊んでる場合じゃなくなるぜ?」
「そりゃまあそうだけどさ」
ゲームの中ではいくらでも大富豪になれるけど、現実世界ではそうはいかない。世の中というものは世知辛いのだ。そう私が言うと、今まですやすや寝ているジローの横で絶望して机に突っ伏していた宍戸が「ゲームの世界だって世知辛えよ」とつぶやいた。どんまい、宍戸。
「あ、そうだ」
「なんだよ」
「そんなに大富豪になりたいなら、跡部に頼んでみたら?」
「いや、それはさすがに無理だろ」
(110815)

人魚姫と王子様//越前リョーマ
先輩の声が出なくなった。
原因はよくわからないらしい。なんだそれ。
当然だけど、今日の先輩はいつもより大人しくて、俺が何を言っても困ったより笑うだけだ。
「あのさ、いつもうるさい人がそうやって黙ってると調子狂うんだけど、」
声が出せない彼女は瞬きを数度するだけだ。まるで人魚姫みたいだ、なんてひそかに思う。
「だから早く治してよね、そのままだとつまらないから。」
俺より少しだけ低い位置にある先輩の頭を軽く叩くと、彼女はいつもと同じように頬を膨らませた。うん、そのほうが先輩らしいよ。
(110906)

兎と狼//デンマーク
おおかみさんはおおきなてをひろげてわたしのからだをつかみました。そうしてくちのはしをゆがめてわらうのです。
「逃げても無駄だっぺ」
そのすがたとこえとてもおそろしいのに、そのひとみはどこかかなしげで、わたしはかれからめをはなすことができなくなるのです。
(110815)

先輩刑事と新米刑事//芥川慈郎
「芥川先輩!起きてください!事件ですよ!仕事ですよ!」
「んー、でもまだ眠いC…」
「なんでいっつもそうなんですかこの給料泥棒!貴方の分も私が働いているんですからね!」
「じゃあ、今回もちゃん頑張ってよー、」
「私ではどうにもならない事件だからこうやって先輩を起こしに来てるんです!」
「すごい事件?」
「すごい事件です。」
「丸井くんよりも?」
「…なんでそこで丸井さんが出てくるんですか…」
(110902)

主人と守護霊//イギリス
「ちょっと、ちょっと、イギリスさん」
「なんだよ」
「なんですかこの世界。平和すぎやしませんか。」
「平和なのはいいことじゃねぇか」
「よくない!私はイギリスさんを守護するためにこの世界に呼ばれたんじゃないんですか!?なにも起きなかったら私、ただのニートじゃないですか!」
「まぁまぁ」
「『まぁまぁ』じゃない!っていうか、イギリスさんはなんで私をこの世界に呼んだんですか?別に守護霊必要ないでしょう?」
「そ、それは……、別にどうでもいいだろ!」
「どうでもよくない!」
(110722)

一国の王と一般市民//XANXAS
大きなライオンを撫でながら椅子に座ってふんぞり返る我らがボスはまるで王様みたいだ。そういう私は一般市民…というかヴァリアーの平隊員。ボスの眼中にも入ってすらいないのだろう。
それでも、私はボスが強くてカッコいいことを知っていて、彼より尊敬できる人を知らない。だから、私はずっとザンザス様について行こう、そう思っているのだ。
(110906)