クロエの鼻先で滴がぴちょんと跳ねる。「雨かしら」とが呟くと、ラスティカは「西の方の空が真っ暗だ、そろそろ片付けを始めようか」とパチンと指を鳴らしティーカップやシュガーポットを跡形もなく消し去ってしまった。
今日は特別な気分だった。特に何があったわけではないけれど、みんなでお揃いのリボンをつけてお茶会をした。右を見ても左を見てもアヤメの花のような鮮やかな色のリボンが目に飛び込んで来てなんだかウキウキした。だけど、ウキウキする時間もこれでおしまいだ。次第に雨は強くなり、クロエの肩を、ラスティカの髪の毛を、のスカートを濡らしていく。
慌てて避難してきた屋根の下では、雨音が一際賑やかに聞こえてきた。ほんの少し、しょんぼりした気持ちになって、クロエは小さくため息をつく。クロエに呼応するようにも寂しそうな表情をしてふわりと仕立て屋の肩に降り立った。と、そんな二人の様子に気がついたのか、ラスティカは優しく笑って「クロエ、、」と呼びかけた。
「特別な日を最後まで特別にしたいんだ、だから、一曲聴いて頂けませんか、」
そう言うと西の音楽家はどこからともなくヴァイオリン取り出して、弓を掲げる。彼の胸元と瞳の奥でアヤメの花の色が楽しげに色づいている。「雨の中の演奏会なんて素敵、お芝居の中みたいね」と笑いながらに声をかけられて、クロエは深く頷いた。
雨音とヴァイオリンの音が重なって、オーケストラの演奏みたいだ。