祭りの喧騒はとても賑やかで、声を張り上げないと会話がうまくいかない。クロエが作った浴衣をラスティカと三人で大騒ぎしながら着付けて、それぞれが気に入った色のリボンを帯留めの代わりにつけて歩く。色違いのそれが目に入るだけでウキウキして飛び上がってしまいそうだ。夏のそんな空気がは好きだ。
そんな中、ラスティカが淡く光る提灯飾りを運命の作詞家と勘違いして何処かへ行ってしまった。それはまあ、いつも通りだ。大丈夫ではないけど、大丈夫。にとって問題はそこではなかった。ラスティカが「クロエ、、はぐれないように手を繋いでいよう」と言い出してを真ん中に三人で手を繋いだから、今ここに手を繋いだままの男女二人が残されてしまったのだ。クロエは慌てたようにラスティカが消えていった方角と繋いだ手を交互に見て「勝手に遠くに行かないでよラスティカ〜」と困ったような声を上げている。さりげなく、自然に、手を解いた方が良い、だって彼は『そういう気』は全くないんだし。多分。
だけど、そうやって上手に離れることができるほど大人にはなれないし、彼のことを考えて自分のしたいことを止めることができるほど無欲にはなれなかった。そうしてそのままで居ると、クロエが眉を下げて申し訳なさそうな顔をしながらおずおずと口を開く。
「ご、ごめんね、ずっと手、繋いだままで、俺……」
「えっと、離さないとダメかしら」
「えっ、」
「今離したら、わたしたち二人もバラバラになっちゃって、ラスティカを探すのが大変よ、多分」
まだ大人になれないから、欲張りでいたいから、クロエの気遣いとか、彼が誰を好きなのかとか、こうすることで自分がどう思われるかとか、全部全部そんなの知らないみたいな顔をした。幸いなことに、二人が手を繋いでいることを咎める人はここには居ないし。