「あんたどういうもの食べるんだ?」
「どういうもの?」
キッチンに居た魔法使い(ネロという名前らしい)の問いにミシンの精霊は首を傾げる。精霊というものは本来、人間のように食事をしなくても生きていけるものだから、『食べる』ことに関して考えたことなど一度もなかった。どうしたものか、と賢者とクロエを見上げると、二人も少し難しそうな顔をしている。
「うーん、そもそも、俺たちと同じもの食べて大丈夫なのかな?」
「それもそうですね、お腹を壊したりしたら大変ですし……」
「そうはいってもみんなが飯食ってる中一人だけなにも食べないのは寂しいだろ、ちょっと待ってな」
困ったような表情を浮かべる賢者とクロエを一瞥して、ネロは立ち上がり引き出しを開ける。そうして幾つかの色とりどりの箱を取り出して、机に並べた。
「マッチ箱?」
「魔法使いだとバレないように、料理屋やってる時は使ってたんだよ。……精霊さん、あんたどの色が好きだ?」
精霊が箱を指差すと、魔法使いは「了解」と笑い器用に箱を解体し、そしてまた組み立てて、テーブルのような形にする。
「あと、食器。……これは流石に魔法使わないとな、《アドノディス・オムニス》」
ネロが呪文を唱えると食器たちはたちまち縮まり、にぴったりのサイズになってカラフルな箱を組み立てた台の上に綺麗に並んだ。
「あんたのテーブルと、食器だよ。精霊だってみんなと食事ができたら嬉しいだろ?」
そう言ってネロは笑った。クロエは小さく「すごい」と呟いて、賢者は「流石です、ネロ!」と拍手している。……こんなに嬉しいことが立て続けに起こっても良いのだろうか。