Vivaceかがり縫いのヴィヴァーチェ
since.2020.03.30

若葉の刺繍

‪「ルチル、ルチル!」‬
‪ 食堂を通りかかったルチルが名前を呼ばれて振り返ると、ミシンの精霊・が「見て見て」とテーブルの上にハンカチほどの大きさの布を何枚か広げて手招きをしていた。
‪「こんにちは、さん。お裁縫ですか?」‬
‪「こんにちは、ルチル。ハギレがたくさんあったから、ハンカチにして刺繍をしていたの、ほら」
‬彼女が一枚のハンカチを指し示す。そこには何やら文字が踊っていた。「ルチルが教えてくれた字よ、」とミシンの精霊は嬉しそうに笑う。
「ほんとだ、とっても上手です、」
若葉のような色の糸で刺繍された彼女の名前を指でなぞりながら「花丸ですね、」と笑うとは「やったあ!」と飛び上がりくるくると回った。
「それでね、ルチル、他にも字を教えて欲しいの、」
「もちろんですよ、何から教えましょうか、」
「えっと、まずはね、ルチルの名前から」
「私の?」
そう、と精霊は頷く。
「ルチルの名前を刺繍したハンカチを作るから、いつものお礼に受け取って欲しいの。だめかしら?」
「まあ! 喜んで! 出来上がるのがとっても楽しみです、」
南の魔法使いとミシンの精霊は目を合わせて笑い合う。一針ずつ丁寧に刺繍された彼女の名前のように、一文字ずつ丁寧に書こう。
「じゃあ私、紙とペンを取ってきますね」
「うふふ、じゃあわたし、ここを片付けてお勉強の準備をしておくわ」