さて、この状況どうしたものか。クロエは頭を抱え部屋を見渡す。
どうやらネロがみんなのおやつにと作ったサンドウィッチの中に妙なものが紛れ込んでいたらしい。ジャムやチョコレートが挟んであったものは食べてもなんともなかったから、唯一クロエが手をつけなかったクリームチーズとキノコが混ざったものが原因のような気がする。「甘いものとしょっぱいものって交互に食べたくなるのよね」と言いながらウキウキとサンドイッチを選んでいたミシンの精霊は人間と同じ大きさに、「俺は何でも食べるから、クロエが好きなもの先に選んで良いよ」と言ってサンドイッチを選ぶ順番を譲ってくれた優しい青年・ヒースクリフは年齢退行して赤ちゃんに、そして「呪いか? ファウストを探してくる」と言いながら自分の皿に盛り付けた最後の一つを口にしてしまった東の森番・シノはいつもより数センチ背が伸びて、談話室は異様な状況だった。
このまま元に戻らなかったらどうしよう、というクロエの心配をよそに、ミシンの精霊は膝に乗せた赤ちゃんヒースクリフと楽しそうに手遊びしている。
「ねえねえクロエ、この大きさのヒースクリフの洋服を作りたいわ! 今着てるシャツだと大きすぎるもの! だめかしら?」
「うん、えっと、だめじゃないんだけど、今はそれどころじゃないっていうか……シノ! 見つかった!?」
「見つかったって、何が?」
「何してるのシノ!」
「そこに落ちてたヒースの上着を借りてみた。今の俺ならこのサイズの方が合っているからな」
「勝手にヒースの服着たらダメだよ! じゃなくて! 呪いを解くためにファウストを探しに行ってくれるんじゃなかったの!?」
「クロエ、俺は今のままがいい、ファウストには内緒にしろ」
それじゃダメだって〜! という仕立て屋の声は誰に聞かれることもなく虚しく部屋に響く。が、そうは言ってもクロエも楽しいことと予想できないことが大好きな西の魔法使い。こんな想定外の事態にちょっとだけワクワクしてしまっているのも事実なのである。