「おい、お前、何ため息ついてるんだ」
食堂で兄から出された『宿題』をこなしているうちに、いつのまにか下を向いてため息をついてしまっていたらしい。声をかけられてミチルが顔を上げると、いつのまにか東の森番・シノが向かいの席に座っていた。
「兄貴もリケも居なくて寂しいのか? お子様だな」
そう言ってシノは「ふふん」と鼻を鳴らす。寂しくない、と言ったら嘘になるし、他の魔法使い達に比べたらまだまだ子供だ。だけど、彼にそういう風に言われるのはなんだか良い気分ではない。眉を釣り上げて「お子様じゃないし、寂しくなんかないです!」と噛み付くと、シノは心底楽しそうな表情をした。
「その方がお前らしいじゃないか、ついて来い」
「え!? ど、どこ行くんですかシノさん!」
ミチルを一瞥したシノはマントを翻して部屋の外へ向かう。慌てて付いていくと東の魔法使いは満足そうに目を細めた。
「これから鍛錬だ。今日はファウストが相手をしてくれると言っていたからな、お前も強くなりたいんだろ?」
「……僕もついて行っていいんですか?」
「今日はヒースも居ないからな、」
特別に一緒に連れて行ってやっても良い、と笑うシノの目は、ギラギラと光っていて、まさに『強さを求める獣』そのものだった。ミチルはゴクリと唾を飲んで頷く。
このどこか尊大な態度の魔法使いのことをちょっとだけ格好良いと思ってしまった。