ふわり、とオレンジの香りがする。恐らく彼が使っているシャンプーの匂いだろう。
だが、その爽やかな香りに反して、やっていることは全く爽やかではない。

とフェリシアーノがこのように身体を重ねる回数は、他の恋人同士に比べてそこまで多く無いのでは、と本人は思っている。とはいっても、他がどのような状況なのか知っているわけではないが。
それでも、家族が出払って、誰も居ない彼の家に二人きりとなれば、自然とそういう雰囲気にもなる。
今日は、テレビを見ながらじゃれ合っているうちに、いつの間にか深い口づけを交わし、ずるずると行為に及んでいた。
もしかしたら、ここまで彼の計算のうちなのではないかと少し思うが、本当のところはどうなのかよくわからない。
後ろから散々攻められ、トロトロにされて、ずぶずぶと奥まで埋め込まれた。
下腹部を中心に、彼の肌が直に触れている背中がものすごく熱い。
ソファの上に四つん這いになっているを、覆いかぶさるかのようにフェリシアーノが抱きしめていて、まるで獣のようだとうまく回らない頭でぼんやりと思う。
その時、外でガタンと物音がした。快感ではなく驚きで、の身体がびくんと震える。
不安になり、そっと後ろを振り返ると、フェリシアーノは小さく「あ、」と声をあげた。
「もしかしたら、兄ちゃん、帰ってきたかも。」
「えっ、」
「このまましてたら、見つかっちゃうかもね。」
仮にもここは、フェリシアーノの家族の共用スペースだから、もし彼の兄が帰ってきたのであれば間違いなくこの部屋に足を踏み入れるだろうし、間違いなくこうしていやらしい行為をしている姿を見られるだろう。
「ふぇ、フェリシアーノさん…もう、やめ…、」
「ここでやめてもいいけど…、そしたらちゃん、結構辛いでしょ?」
やめよう、そう言おうとしたを遮って、フェリシアーノは指を絡めていたの手を強くぎゅっと握った。
「俺も辛いし。」という彼の言葉に、反論が出来ない。この熱をそのままにしておくのは、確かに辛い。
「俺の手で、口、塞いでおこうか?」
フェリシアーノの問いに、勢いよく頷くと、彼は意地悪な笑みを浮かべてその手でスッとの口を塞いだ。
そしてそのまま、ズンと腰を進める。「ぅっ」とくぐもった喘ぎ声が上がった。「噛んでも大丈夫だからね、」という言葉に返事をする余裕は、にはもう無い。
「んっ、はっあ、…」
「んー、やっぱり口塞いでも声って出るんだ、ね。」
「ふっ…、」
「すぐ終わるから、ちょっと我慢してね、」
ガツンと弱い場所を突かれ「ひっ」と喉の奥から一際高い声が出る。
「だから、噛んでいいって言ったでしょ、」
「ふぁ、らって、ふぇりしあーのさん…」
「俺は大丈夫だから、ね?」
もごもごと口答えするに、有無を言わさぬように耳元で囁き、そのまま耳たぶにキスを落とし、がぶりと噛み付く。
「ほら、これでおあいこ、」と言うフェリシアーノの声は、どこか楽しそうだ。

目の前が真っ白になり、そのままソファに崩れ落ちた。
フェリシアーノはそんなをそのまま抱きしめ、首筋にキスをする。
「そういえば…、」
「…ん?」
「…お兄さん、帰ってきませんでしたね。」
「そうだねー。風の音だったのかな。」
弱々しく言葉を紡ぎながらも、がフェリシアーノの方を見ると、彼はニコニコと笑っていた。
これも彼の計算のうちなのだろうか。少し聞いて見たかったが、独特の倦怠感のせいでそれは声になって出てこなかった。