シングルベッド

その長い指に、柔らかい声に、いつもより鋭い視線に、翻弄される。周りの物がなにも見えなくなって、彼のことしか考えられなくなる。愚かで、儚く、愛しい行為だ。

びりびりと布を裂く嫌な音がした。ぎゅっと音がするほど力強くつぶっていた目を恐る恐る開き、音がした方を見ると、履いていたストッキングは引き裂かれて原型を留めていなかった。

「や、破かないでくださいよお…。」

弱々しい声でが訴えると、ストッキングをあられもない姿にした張本人であるフェリシアーノは、にっこりと笑って引き裂かれた布と布の隙間にするりと指を滑らす。

「大丈夫だよー、新しいの買ってあげるから。」

何が大丈夫なのかさっぱりわからない。再び抗議の声を上げようとしたら、彼は布の隙間から下着に指を差し込んできた。紡ごうとしていた言葉は「ひっ、」と小さな悲鳴に変わる。

ちゃん、力抜いて…。…そう、いい子。」

結局、彼に言われるがまま、身を委ねるしかない。ゆるゆるとフェリシアーノの目を見ると、彼は下に触れている方とは反対の手での髪を梳かすように撫で、そのまま彼女の手を握る。
くちゅくちゅと小さく卑猥な水音が響く。耳を塞ぎたくなるが、握った手がそれを許してはくれない。

カリ、と彼の指がの中で壁を引っ掻くように動く。
目の前が一瞬真っ白になって、身体が少し震える。くたっと力が抜けて、フェリシアーノに体重を預けてしまう。何回経験しても魂が抜けるようなこの瞬間に慣れることはないだろう。

「ねぇ、涙が出るくらい、気持ちよかった?」

フェリシアーノにそう言われ、目元を指で拭われて、自分の頬に液体が伝っていることにはじめて気づく。
そんなを見て「かわいいよ」と耳元に囁いてくるフェリシアーノはすごく嬉しそうだ。
普段は涙を流すと困ったような顔をするくせに、とても自分勝手だ、と思う。
だが、それに文句をいうほどの余裕は今のには無い。息を荒くして、フェリシアーノの肩にしがみつくことしか出来ないのだ。
そうやってがいっぱいいっぱいになってなにも言えずにいると、フェリシアーノはが落ち着くまで背中をさすったりして待っていてくれる。いつもこうやって飴と鞭の使い分けをしてくる。とても卑怯だ。

「フェリシアーノ…、さん、」

名前を呼ぶと、フェリシアーノはの背中をさする手を止め、彼女の目を見て額に浮かんだ汗を拭う。

「なに?」
「もう…、だいじょうぶ、だから、つづき…はやく…。」

こうやってが自分から行為の続きを求めることは初めてだ。の言葉にフェリシアーノ少し驚いたような顔をした後「…Si、わかった。」と頷きの額に唇を寄せた。それを合図に互いの指を絡め、トロトロに溶けそうなのそこに自身を宛てがう。
目があって、深い口づけを交わす。隙間がなくなるほどに、身体を重ねれば、いつか一つになれるのだろうか。