こんにちは、Hello、Hola、聞こえますか? 
宇宙はとっても広いですよ。 
スペイン、あなたのおうちがここからはとてもよく見えます。今日もよく晴れていますか? 
機械と真空空間に囲まれているはずなのに、不思議ね、あなたのトマトの匂いがします。あなたが麦わら帽子を振っているのが見える気がします。 
 
 
 
 
 
 
 
 
青い空が好きだった。でも、空にきらめく星々も大好きだった。この地上を離れて、空の向こうの宇宙に飛び立つのが私の夢、だった。その話をするといつも、スペインは『が諦めなければずっと夢はかなうで』と笑って言っていた。その言葉にどれだけ勇気をもらったことか。だから、夢がかなったことは一番にスペインに伝えたかった。 
 
「スペイン!!」 
 
スペインはいつもと同じTシャツを着て、ホースでトマト畑に水をまいている。水しぶきのせいか、太陽の光のせいか、キラキラ輝くスペインに私は勢い良く抱きついた。 
 
「! うわ!……なんや、かぁ、びっくりさせんといてやぁ」 
 
そういいながらもスペインは『よう来たなぁ』とわたしの頭をなでる。スペインの大きな手が好きで私は思わず微笑んだ。 
 
「あんな、スペイン、私な、アメリカに行くことになってん!」 
「へー、そうなん………って、なんでやねん!」 
 
スペインの顔が苦虫をかみつぶしたように歪む。あれ、もしかして、怒ってる? 
 
「よ、喜んでくれへんの!?」 
「当たり前やろ!がおらんようになったら俺はどうすればいいんや!」 
 
スペインは頭を抱えてうずくまる、私は慰めることもできず、ただ右往左往するだけだ。 
 
「スペイン、」 
「ああああ、まさかロマーノに続いてまで家を出ていくことになるとは思わへんかった!しかもアメリカのところやなんて!どないしよう!とりあえずあの餓鬼をぶっ飛ばしてやらなあかん!」 
「スペイン、」 
「は!もしや、俺が貧乏なのがあかんかったん?内職ばっかりで構ってやれへんかったもんなぁ、あ、それとももしかして…」 
「親分!」 
「い、いま、なんて…が俺のこと親分って……」 
 
スペインが大いなる勘違いをしていることはよくわかった。ちゃんと伝えないと。夢がかなったって。それはあなたのおかげだって。 
 
「そんなことは今どうでもええねん!あんな、親分、私がアメリカに行くことになったのは、宇宙飛行士になる夢が叶ったからやで!私は宇宙に行くことになったけど、親分のところを出ていくんとちがうよ?ちゃんと最後は親分のところに帰ってくるから安心しぃ、」 
「…、それ、ほんまに?」 
「これが嘘をついてる顔に見える?」 
「みえへん」 
「やろ?」 
 
私が笑うと、スペインもほっとしたように笑う。そして『の夢がかなってよかったわぁ、』とまた私の頭をなでる。だから私は言ってやった。 
 
「あんな、スペイン、私の夢がかなったのはスペインのおかげなんやで、」 
 
 
 
 
 
 
 
 
青い青い空の下で私は大地を踏みしめた。久しぶりに重力を感じる、不思議な感触。 
 
「ただいま、スペイン!」 
 
私は一番にスペインの日に焼けた腕に飛び込んだ。 
あのね、あなたに話したいことがたくさんあるの。 
 
 
タイトルは坂本真綾さんの楽曲から