「ぬしさま、今宵は月が綺麗ですね。」
小狐丸がそう言って笑い徳利を傾けると、名前の持つ盃に空に浮かんだ月が盃の中に沈む。
縁側から見る月の黄金色の光は、小狐丸の纏う衣の色によく似ている。
*
少しそのうような予感はしていたが、どうやら小狐丸は名前に比べて少し酒に呑まれやすいらしい。口にした量は同じほどのはずだが、先程から動作がいつもに比べて緩慢になって、銀の髪の隙間からちらりと垣間見える耳もほんのりと紅くなっている。
「小狐丸ちゃん、酔っているんですか?」
「さあ、どうでしょう。」
狐はにこにこといつも以上に楽しそうだ。強がっているのか、酔っているという自覚がないのか、定かではないが、構われたそうに名前の傍に寄ってきて、頬を摺り寄せてきたり、胸に顔をうずめてきたりする。
「ふふ、困った小狐丸ちゃんですね、」
胸に顔をうずめる小狐丸の銀の髪をいつも彼が己にそうするようにさらりさらりと撫でる。それが心地よいらしく、狐は目を細め嬉しそうにしている。
かわいい、と言葉が漏れたのは無意識だった。小さな声だったが、小狐丸の耳に届くには十分すぎるほどだったのだろう、ぴくりと眉を吊り上げ「…『かわいい』、ですか。」と呟く大きな狐は少し不機嫌そうだ。
「かわいい、と言われるのは嫌ですか?」
「いえ、嫌いではありません、が、」
嫌いではないといいつつその視線がじっとりとしたものを含んでいることに変わりはない。
「あの、小狐丸ちゃん、気を悪くされたのでしたらごめんなさい、」
普段はこのようなことで機嫌を損ねたりすることは無い小狐丸だが、やはり酒を飲むと少し正直になってしまうのだろうか。
「………そう思われるのでしたらぬしさま、『かわいい』狐の戯れに付き合ってくださいますかな。」
そう言って狐は名前に口づけて、着物の合わせを緩め、するりと肩を撫でる。そうしてそのなだらかな曲線に唇を寄せて、がぶりと噛みついた。酒のせいで加減ができなくなっているのだろうか、いつもの甘噛みに比べてかなり乱暴だ。「い゛っ…」とうめき声をあげると、狐はにんまりと口元を歪め、じんわりと赤い血がにじむ肩口をぺろりと舐める。
「跡ができてしまいますね、ぬしさま」
「こ…ぎつねまるちゃんのせいですよ……、」
「ええ、ですがかわいい狐のしたことですので、ぬしさまはお許しくださるでしょう?」
先程の名前のつぶやきを根に持ってこのようなことをしているのかと思っていたが、どうやらこの狐は不機嫌になったふりをして利用しているだけらしい。その証拠にがぶがぶと楽しそうに名前の肌のあちこちに噛みついたりきつく吸い上げて跡を残したりしている。
「空の月もよいですが、此方の月も良いものですね。」
そう言って小狐丸は名前の肌に紅く丸く浮かんだ噛み跡や鬱血跡を愛おしげに撫でる。確かに丸くはあるけれどあまり月には似ていないと思う…が、それは口にせず狐にされるがままになる。
狐と戯れているうちに、空に浮かぶ黄金は薄っすらと流れてきた雲により姿が隠された。先程よりも随分と闇が深くなる。
「さあぬしさま、空の月がなくなりました故、もうひとつここに月を浮かべてもよろしいですか?」
*
いつも以上に性急に、滾りを中に差し込まれた。熱く膨らんだ肉棒が名前の中を執拗に擦る。と、同時に耳朶や首筋に噛みつかれるのだからたまらない。すでに無数の赤い月を浮かべた名前の肌は噛みつかれる痛みでさえも快感として認識してしまう。
慣らされていなくともすっかり小狐丸により拓かれた雌孔は、内壁を擦られるうちに徐々に透明な蜜を零し、にちゅ、ぐちゅ、という厭らしい水音を立てる。
「ふっ、ぅ、…はぁ…ぬしさま……、ぬしさま……、」
熱の籠った視線でこちらを見つめ、ただ己を呼ぶ狐の頭に手を伸ばし、できるだけ優しく、愛おしむように撫でる。
「ぅ、……ぬしさま…、申し訳…ありませぬ…小狐は、もう……ッ!」
「ん、いいですよ……、出し、て……、」
腹にできるだけ力を込めて、きゅう、と締め付けると、小狐丸の滾りがどく、どくり、と中で爆ぜる。白濁を中に吐き出して満足したのか、そのまま小狐丸は名前の胸に顔を埋めて、すう、と寝息を立て始めてしまった。
「え、あ、まって、小狐丸ちゃ、」
ずいぶん酒に呑まれていたようだし、先に寝てしまうのは構わないのだが、小狐丸自身は名前の中に埋め込まれたままだ。少し身を捩れば引き抜けそうではあるのだが、腰や手を小狐丸の腕で固定されて身動きが取れなくなってしまっている。しかも、夜更けで人がいないとはいえここは縁側だ。このままでいては風邪をひいてしまうし、朝になれば他の刀剣男士もここを通るだろう。
慌てる名前と幸せそうに眠る小狐丸を笑うかのように、雲に隠れていた月は再び顔を出した。