一人は寂しいから

随分長いこと小狐丸とまともに話せていない。
顔を合わせれば挨拶はするし、仕事に関する話もするし、喧嘩をしているわけではない。むしろ会いたくて話したくてたまらないのだが、遠征や出陣、演練、書類仕事と忙しい日々が続き、気づけば二週間近く二人だけでゆっくりと過ごす時間というものがとれていなかった。

名前が幼いころは、定期的に刀剣男士に触れなければ彼らは刀の姿に戻ってしまっていたが、名前の身体が成長するにつれ霊力や審神者としての能力も強くなってきているためそのようなことは無くなった。とはいえ、長い期間触れ合えなければ淋しいことに変わりは無い。

長期間の遠征から戻ってきた小狐丸は、すぐに一日遠征の任を与えられ、本丸から離れることになっていた。部隊の編成を決めるのは最終的には名前本人であるのだが、戦場に見合った強さの刀剣を、と思うとどうしても練度の高い小狐丸よりも鍛錬が必要な者を戦闘部隊に宛がってしまう。

出かける直前、名前の部屋に顔を出した小狐丸は、いつも通り名前の髪を数度梳くように撫でた後、丁寧に折りたたまれた和紙を差し出して来た。名前が受け取り、「お手紙ですか?」と聞くと狐は嬉しそうに頷いた。

「日暮れには戻りますゆえ、それまでぬしさまにはこれを。」

そう言って小狐丸は名前の額に唇を落とし、柄の先についた鈴を鳴らしながら出掛けて行った。

これで十分だと思いたいのだが、これだけでは足りない、もっと欲しいと心の奥で思ってしまう。ずっと小狐丸から与えられ続けたため、欲しがりになってしまった自分に苦笑する。

そっと開いた文から、少しだけ、彼の匂いがする気がする。

その日の業務を終わらせた後、気が付けば、名前は離れにある小狐丸の居室に足を向けていた。
帰ってきた彼と一番に会いたかったから……とはいえ、彼はいつも遠征から戻ればすぐに名前を探しに来てくれるから、このようなことをする必要はないし、どちらかというと名前が衝動で動いてしまっただけというほうが正しい。

深く息を吸うと、どこか甘いにおいが部屋中に漂っている。小狐丸の匂いだ。
彼の生まれた時代のせいか、あの太刀は薫物を嗜み、いつも安息香のような香りを纏っている。

ふらふらと部屋の奥に足を進め、きちんと畳まれた布団の隅にうずくまる。傍に置かれた予備の着物を手に取り抱きしめると、彼の匂いが増して頭がくらくらした。

身体の奥がうずく。着物を抱きしめたままそろそろと己の下腹部に手を伸ばした。

彼がどのように触れていたのか、思い出しながら自分の指が赤く腫れた花芯に触れる。ぐにぐにと押しつぶすように指を動かすと、ぴりぴりと足先まで電流が通ったような感覚になり、熱い吐息が漏れる。
同時に胸のふくらみにも手を伸ばし、彼が弄ぶときのように、飾りを転がすと、自分の意思とは関係なく、身体がぴくぴくと震えた。

「はぁ…、んっ…」と、漏れる声は顔をうずめる布に吸収されていく。呼吸するたびに、嗅ぎなれた香りが肺の中に入ってきて、彼に抱かれているような気分になる。

すでにとろとろと蜜を零している蜜孔にそっと指を埋めようとしたその時、障子が音を立てず開き、すっと夕暮れの光が部屋の中に差し込んできた。

「ここにいらしたのですか、ぬしさま。」

聞き覚えのあるほっとしたような声が聞こえ、動かしていた手がぴたりと止まる。
最初はうずくまっているだけと思っていたのだろう、小狐丸は躊躇うことなくこちらへ近づいてくる、が、名前の様子を見て、足を止め、おやおや、と口の端を釣り上げた。

足の付け根に添えられた手、潤んだ瞳、紅くなった頬、崩れて乱れた着物…これだけで名前が何をしていたかは一目瞭然だろう。愉快そうに見下ろされ、鼓動が早くなる。

「こんなところでいたされているとは…、この小狐が待ちきれなかったのですか。」

そう言って狐は名前と視線を合わせるように腰を下ろし、彼女の頬に触れて、ニヤリと笑う。待ち焦がれた濃厚な香りがすぐそばにある。足先から太腿にかけてをすぅ、と撫でられ、身体がびくびくと震えた。

「私を想いこのようにされているとは、本当に、ぬしさまは可愛らしい。」
「ふっ、あっ、あの、小狐丸ちゃん、」

何か言おうとひらきかけた名前の口を、唇で塞ぎ、小狐丸はにやりと笑う。

「ではぬしさま、ぬしさまの可愛らしい指が、ぬしさまの厭らしい穴にどのように触れていたのか……、この小狐にきちんと見せていただけますか。」

いやだいやだと抵抗しても、この太刀には敵わないことはわかっている。それでも、「本当にやるんですか?」と聞いたのは、もしかしたら許してもらえるかもしれない、という期待があったからだ。当然、彼の「勿論。」という言葉でその期待はあっさり裏切られる。

「でも、そんな……」
「おや、お一人ではできませんか」

先程までしておられたではないですか、と狐はくす、と笑う。

「では、この小狐が小狐がお手伝いいたしましょう、」

小狐丸はそう言って名前の手を掴みそっと蜜穴に充がった。指先にぬらぬらとした液体が絡まり、思わず目を閉じてしまう。そのまま、自らの指と小狐丸の指が同時に中に入ってくる。慣らされていないはずなのにとろとろになっているそこは、二人分の指をいとも簡単に呑み込んだ。
しばらく、そのままぎちぎちと埋め込まれていたが、やがて小狐丸の指だけがずるりと身体から引き抜かれる。「ぁ…、」と小さくつぶやき彼の顔を見ると、狐は目を細めて蜜壺の入り口をぐるりとなぞり手を離した。

「では、あとは、ぬしさまの好いように動かしてくだされ。」

狐の言葉に操られるかのように、名前は自ら指を抜き差しし、快感を貪る。くちゅくちゅ、という水音がいつもより大きく響いているような気がした。
小狐丸がいつも触れている場所を探して、無意識のうちに腰も揺れている。だが、名前の小さな手と細い指では本当に気持ちが良いところには到底届かなくて、ますます身体はせつなく震えてしまう。「小狐丸ちゃん、」と求めるように彼の名を呼んでも、意地悪な狐は笑って此方を見るだけだ。

「あ、ひゃ、小狐丸ちゃ…小狐丸ちゃん…っぁ!」

足先をきゅう、と丸めて、名前は己の指で達してしまった。
ぼんやりと虚空を見つめているところへ、「ぬしさま、」と狐に手を伸ばされた。導かれるように彼に近づき、指を絡めると、腕の中へ引き込まれる。
……ようやく触れることができた。登りつめた余韻でぐったりとその身を小狐丸の胸板に預けると、小狐丸はよくできました、とでもいうように彼女の長い髪をさらさらと梳くように撫でる。

「この小狐の名を呼びながら、気をやられるとは…、」

「うれしや、」と呟き、小狐丸は愛液で濡れた名前の手を顔を近づけスンと匂いを嗅ぐ。そのままその指を口に含み絡みついた液体をぺろぺろと舐めとるように舌を動かす。自ら触れるだけですっかり解れてしまった名前の身体は、指先への愛撫だけでもぞくぞくと震え、目の端にはじんわりと涙が浮かぶほどだった。

しばらく名前の手を握り、指を一本一本丁寧に舌を這わせていた小狐丸だが、すっかりふやけてしまった人差し指をちゅぷ、と音を立てて口から離す。そのままくちびるに軽く口付けて、とろとろの中に刺激が欲しくて震えていた名前の膝をつかみ、足を大きく広げた。蜜を零しながら、太くて大きい小狐丸のモノが欲しい欲しいとはくはくと開閉する入口が露わになり、思わず顔をそむけてしまう。

「さて、お待たせしました、ぬしさま。」

本物の小狐が、参りましたよ。
低い声で耳元でささやかれ、触れられてもいないのに、奥の花がきゅんと疼いた。

ぬぷぷ、と音を立てて小狐丸の滾りが埋め込まれていく。足を小狐丸の腰に絡めるとより深いところまでぐっと押し込まれ、小さな蜜孔はぎちぎちと窮屈になる。自ら強請っているようではしたないと分かってはいるが、奥まで届き密着できるこの体制を変える気はお互いに無かった。

しばらくそのまま留まっていたかったが、いつまでもこうしているわけにもいかない。「動きますよ」と耳元で囁き抽送を始める小狐丸に合わせて、名前の腰もゆらゆらと動く。
最初はみっちりと埋め込まれて動けないのではないかと思うほどだった結合部も徐々にほぐれて、ぐちゅ、ぐちゅ、と液体がまじりあう音を立て始め、内壁がじゅうじゅうと小狐丸を絞り上げるように動く。普段なら恥ずかしさで動きを止めてしまうところだが、久しぶりに小狐丸に触れる今日はそのような些細なことよりも、波のように押し寄せる快感に意識が向いてしまっている。

「ぬしさま、お一人は淋しかったでしょう、」
「ひっ、ぅ、ん…、淋しか……った…、」
「ふふ、ご安心ください、いまはすぐそばに小狐がおります、ゆえ」

入口は、じゅぽ、ぐぷ、と卑猥な音を立て、膣壁はぐにゅぐにゅと動く。互いの肌もしっとりと汗で湿り、触れるたびに吸い付いてぱん、ぱん、と音を立てた。

「〜っひぅ、ぁ、ぅ、そこ、こんこんって……、ぁ、ぁ、〜〜〜っ」
「ぬしさまはここを突かれるがお好きなのですね…、小さなその手では届かない、ここ、が…、」

そう言って小狐は最奥をぐり、と抉るように突くから、口から高く甘い声が出るのを止められなくなる。

「ぃ、っ〜〜はぁっ、おく、あたって、ぅ、ぁんっ」
「…っはぁ、はあっ…、ぬ…しさま、このまま、中に、注ぎますよ……、」
「んっ、ぅ、ひゃ、あ、あああんっ、れて…っぁ…あ…ぁ…つい…、」

背を弓の用に撓らせて、名前は再び絶頂を迎える。同時にびゅくびゅくと中に流し込まれた白濁液は、中からあふれ出て敷き布にぽたぽたと落ちた。

ずるりと楔を引き抜かれ、名前の肩はふるりと震える。そのまま小狐丸に身を任せても良かったが、「ねえ小狐丸ちゃん、」と呼びかけて、ゆったりとした動作で小狐丸の首の後ろに手を回し、今にもお互いの唇が合わさってしまいそうなほどの距離で名前は囁くように問いかける。

「明日はずっと、一緒に居てくれますか?」

名前の言葉に小狐丸は目を細め笑い、「勿論ですよ、」と頷き口付けを落とした。

戻る